「おかあさんもたいへんだねぇ。」ヒロくんの口から発せられたこの言葉に、思わず息子と顔を見合わせて笑ってしまいました。
デイがない日は、朝からの、いえ前夜からの長期戦なので、体力と気力配分が重要となります。
翌朝、デイに送り出すまでに、体力が続く事と、心が折れない事、特に、精神的に限界を超えないようにする事が最重要課題です。
私の場合、いったんほんのちょっとでも限界線からつま先がはみ出してしまうと、一気にずずずーーーーと滑ってしまう危険をはらんでいます。
55年も生きていると、自分の危険水域を熟知しています。
だから・・・・朝から、出来るだけ穏やかに、ゆっくりと落ち着いて事を進めるようにします。
幸い、今日もお天気が良かったので、遅い朝食の後、メグちゃんのお散歩に出かけることにしました。
朝から、まだ背後霊状態にはなっていません。
お散歩していると、メグちゃんの片思いの彼氏、ゲンゴロウくんのおうちの前で、ゲンくんのお母さんとお姉さんが縁側で日向ぼっこをしているのに出会いました。
メグちゃんは早速、ゲンくんにアタックを開始しました。誰に似たのか、とても積極的なメグちゃんなのです。
それに対し、もうおじいさんの域に達しているゲンくんは、「なんだ、この小娘が・・」と、やや迷惑そうな感じです。
お母さんとお姉さん、ヒロくんと私、それに二匹の犬。
じゃれあう犬を眺めながら、お互いの飼い主が笑いあう、何処にでもある犬好き同士の光景です。
でも、今日のこの20分程の時間が・・・・・私には奇跡に思えました。
ヒロくんが、穏やかな笑みを湛えて・・・その場に「居られた」からです。
そして、一言二言、差しさわりのない言葉をしゃべったりもしたからです。
いつもは、私が他の誰かとちょっとお話していると、たちまち不機嫌さ全開となって、ほんの数分しか、その場には居られないのに・・・・
おかげで、メグちゃんはゲンくんにゆっくりと自己アピールする事が出来ました。
いったい、どうしたんだろう・・・・?どうして今日は、こんなにいい時間が過ごせたんだろう・・・・?
家に戻ると、ちょうどお昼の時間になっていて、息子たちがお弁当を食べ始めたところでした。
仕事が忙しくなってから、決まった時間にちゃんとお昼が取れるように、息子たちは外からお弁当を取っています。
私は、味噌汁を温めたり、メグちゃんのお水を入れ替えたりしながら、ちゃんと自分の席に座って待っているヒロくんに向かって、「今、チャーハン作るからね。」と言って、急いで作り始めました。
その時です、
「おかあさんもたいへんだねぇ。」と、ヒロくんの口からねぎらいの言葉が出たのは。
何ともタイミングの良いその言葉に、その場に居た皆は、笑わずにはいられませんでした。
ねぎらいの言葉をかけてもらって、家族みんなで笑って・・・・・
その笑いは、とてつもなく切ない、切ない笑いですが、
それでも、笑いがあった方が・・・・・救われます。
これからも訪れてくれるといいですね。
きっとありますよ!