朝、いつも通りデイへ送り出してほっとしたものの、今日はちょっと気分が晴れません。
昨夜の出来事です。
いつも8時には直ぐに眠るのに、私が寝に行く10時か11時頃には目を開けていることが多いので、いったい何時ごろから目が覚めるのか確かめてみようと思って、30分おきにそっと観察してみようと思ったのです。
20:00 いつも通り就寝 直ぐに眠りにつく
20:30 すやすやと眠っている 良かった
21:00 そっと覗きに行くと、目を開けていた。「トイレ行く?」「うん。」そして、オシッコ。
21:15 寝室から「おかあさ~ん。」と呼ぶ声。飛んでゆくと、「なんとかしてよ。」と混乱している様子で、フーフーとしんどそうな息使い。
「眠れないんだったらテレビでも見ようか。」と言うと、起きて来る。相変わらず、フーフーと苦しそう。
ひょっとしてウンチが溜まっていてそれで苦しいのかと思って、トイレに連れて行き座らせる。
そっと覗いていると、本人はかなりいきんでいるけれど、結局少量の便が出ただけ。溜まっていて出したいのに出なくていきんでいるのか、それとも、便意はないのに便座に座ると出さなくてはいけないと思って、いきんでいるだけなのか、不明です。
21:30 リビングに戻る 「お茶飲む?」「うん。もういいよ。わかるようになったから。」
ほんのちょっとだけ落ち着いたようですが、その後もしんどそうな状態は続いています。
風呂から上がってきた息子も、父親のいつにない状態にやや心配顔です。「おとうさん、眠れないの?」など、声をかけてくれますが、ヒロくんは返事をしません。
息子が飲もうと思ってテーブルにおいていたヤクルトに黙って手を伸ばします。「あ、お父さん飲む?いいよ。」優しい息子です。
22:30 再び寝室へ。ベッドに横になると、ちょうど足元に見えるたんすの方を両手で指して、「だれもなにもしてくれなかった。」と言います。
ヒロくんの頭の中では、何か困った事が起きているのに、誰も助けてくれなかったと言う現象が起きていたのでしょう。
「おかあさんが何でもしてあげるから大丈夫だよ。」と言うと、あ~そうか、とちょっと安堵した気配があります。
そして、「だいたいわかった。だからもういいよ。わかったから。」と言って、横になりました。
23:00 「今日はここでねようっと。」と言って私がヒロくんのベッドに潜り込むと、「ありがとう。」と初めてちょっとだけ笑顔が出ました。不安な時の安定剤として一番有効なのは肌の温もりです。
これで漸く落ち着いて眠ってくれるかと思いきや・・・・・
直ぐに起き上がって、私のベッドに行ってしばらく座っていたかと思うと、また自分のベッドに戻ってきたものの上下を逆に入ってきました。
でも、その表情は漸く穏やかになって、眉間の皺も消えていたので、私は自分のベッドに戻って、ヒロくんは上下逆のまま眠りにつきました。
どうかこのまま朝まで眠ってくれますように、と言う私の期待はいとも簡単に裏切られて、ヒロくんは何度も何度も何度も何度も・・・・起き上がり、立ち上がり、多分殆ど眠れないまま朝を迎えました。
朝、ヒロくんの目からは、また・・・・一筋の涙がこぼれていました。
一晩ですっかり疲れ切ってしまった感じのヒロくんは、まるでシロちゃんが死んでしまった朝のようにベッドに腰掛けて涙を流しています。
私は、「夕べは大変だったね。何があったかわかる?」と無駄を承知で聞いていました。
「わからない。」当然の答えです。
窓の外は青空が広がっています。「わあ~、今日もいい天気。また何処かドライブに連れて行ってもらえるね。」と、私の空元気も空しく響きます。
認知症の特権は、忘れる事なのに・・・・・
昨夜の嫌な記憶なんか忘れてくれればいいのに・・・・
すっかり忘れていつも通りの元気な朝を迎えてくれれば良かったのに・・・
9:00 Nホームさんのお迎えの車に、ヒロくんは黙って乗り込んで行きました。
デイでの様子はどうだったのでしょう。
元気な顔で帰ってこられると安堵しますね。
認知症の人本人の苦しみそのものは救ってやれない。
できるのは寄り添うことのみ。
本人にも家族にもつらい病です。
momoさんが消耗されませんように!