今週の火曜日は、いつもとちょっと違う火曜日だった。
夫は、夕方4時に帰って来た。
外が明るくて暑さが厳しい間は、夕方連れてきてもらって、夕食を食べて、外を散歩して、日が落ちる前に連れて帰る、そんな風に過してみたいと思っていた事が実現したのだ。
連れてこられた夫は、凄いしかめっ面。

出発前から、こんな顔になっていたそうだ。
お父さん、お帰り。お家に着いたよ。と、声をかけても、目が開かないので、本人は何処にいるのか分からないだろう。
リフトに乗せて、ゆっくりゆっくり上がってて行く途中、夫はちょっと目を開いて、しかめっ面のまま笑った。


職員さんが、目が開いて家に帰ってきた事が分かったからだ、と言って下さるので、そうだと言う事にしておく。
そこからの夫は、絶好調だった。
久しぶりに顔を見せた事務員のOさんに、惜しみなく笑顔を披露した。

やはり、夕方帰ってくるのは正解だ。
陽が落ちて涼しくなったので、外を散歩した。
その後、誰もいなくなった会社の建物の中に、「元社長さん」を案内した。
夫が、この建物の中に足を踏み入れたのは、いったい何年ぶりだろう。
長い廊下を通って、今、改装中の部屋の前まで連れて行った。
夫は、じっと目を開いて、嘗ての自分の職場の壁と対峙した。
ほら、こんなにきれいになったんだよ。凄いでしょう!デイに通い始めた頃、夫の一番の心配事は、自分の会社の事だったらしい。
苦悩の表情の時に、
「どうしたんですか?」
「会社が心配だ。息子たちに任せていいものかどうか・・・」
こんな会話が何度もあった、と言う事を、後から聞いた。
そんなに心配しているのだったら、あの頃、嘘でもいいから、もっと夫の心を楽にさせてあげる言葉をかければ良かった・・・
と、今になって思うけれど、あの頃はあの頃で、精一杯だったのだから仕方がない・・と思うしかない。
今、じっと白木の壁を見つめる夫の顔からは、残念ながら何かを読み取ることは出来なかった。
ただ、じっとじっと見つめていた。
そうか、こんなに立派になったんだな、もう、大丈夫だな。そう、思ってくれた、と思いたい。
それから、家に戻って、一緒に夕食を食べた。
食べながら、夫と一緒に夕食を家で食べるのが、いつ以来だろうかと考えた。
それは、ちょうど2年前だった。
奇跡的に日付も同じ
7月22日だったのだ。
2年前の7月22日に、一緒に夕食を食べた翌日、夫は
予期せず3度目の入院となり、引き裂かれる様な状態で、私の手元から離れていった。
あれから2年、
たったの2年しか経っていないのに、100年も200年も前の出来事に感じられる。
そして、夫は今、再び家に帰って来て、私と一緒に夕食を食べている。
2年ぶりのディナーは、もぎたてのゴーヤだ。

この一年、週に一度、一緒に昼食を食べることが出来た。
夕食は、ほぼ毎日、夫の部屋で一緒に食べて来た。
だけど、「家で」「一緒に」「夕食を」食べる、
これはまた、違った喜びだ。
可能ならば、このままお泊りを・・と思ったけれど、それは無理。
7時過ぎ、暗くなる前に、送って行った。
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