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考える人

台風一過の晴天の元、予定通り夫は火曜日の帰宅をした。


ゆっくりとリフトが上がって行くのを待つ間、送って来て下さったUさんに、昨日の100年ぶりの感動を話した。


Uさんは、「今日も車に乗る前、笑顔でした。でも、笑って下さることはあるけど、泣いたのは見たことがありません。」と言われた。


そして、こうも言われた。


「年々、こうやって感情が豊かになっていかれる方は、今までに居られませんでした。」と。


Uさんは、そう言う見方をされている。


私は、少々違う。


夫と私の関係に限定して考えると、


そもそも夫はもともと豊かな感情を失ってはいなかった、


だけど、ここに至る数年の間、あまりにも色んな出来事が激しすぎて、私が、夫のその豊かな感情に気がつくことが出来なかった、


気付いてあげるゆとりがなかった、


それが正解ではないかと感じている。





それはさておき・・・・


夫と一緒に家に入って、いつも通り、「天ざる」を食べた。


食欲が衰えないのは、本当に嬉しい。


食べ終わると、リクライニングを倒してお昼寝タイム。


とても穏かな顔で眠っている。


何て、平和なひと時だろう。


しばらくして目を覚ました夫は、そのままの体勢で、大きく目を開き、周りの景色を眺めている。


その体勢から目に映るのは、天井、壁、そして壁に掛けられた額、位だ。


それでも夫は、そんな景色を飽きずに眺めている。


「なんとなく、なつかしいような、みたことあるようなながめ」とでも思っている様な表情だ。


お父さん、起きたの?


夫の視野に入らない位置から、そう声を掛けた。


夫は、明らかに私の声に反応して、声の主を探し始めた。



「あれ、きいたことがあるこえがする」


きょろきょろ動く目がそう言っている。



ここだよ。


と、顔を見せると、満面の笑み・・・・とはいかなかった、残念。


でも、本当に穏かな良い表情の夫を見ることは、何にもまして幸せである。


ふっくらした健康そうな顔を見ながら、ふと、骸骨みたいだった頃を思い出したりもした。


夫は、とても穏かな顔をしているが、目の前のおばさんが自分の妻だとは分かっていない。


ただ、良く見る顔で、自分にとって心地よい人である、と感じている。


それで充分だ。


車椅子を窓際に持ってきて、お八つを食べる。


バナナとお茶。


しばらくすると、夫の脳が、少しご機嫌を悪くしたようだ。


夫は、急に、とても不安そうな表情になった。


お父さん、大丈夫だよ。お家だよ。


そう声を掛ける私を見る目が、完全に初めての人を見る目に変わっている。


こんな時は、むやみに声を掛けないで、そっと傍に居るだけにしておく。


知らない人から、やたら笑顔で声を掛けられても、逆に不安が増すだけかもしれない。


それに、今の私は、夫からそう言う目で見られても、悲しくも淋しくもショックでもないから。


夫は、やはり、不安そうな顔で、周りを見ている。


突然、見知らぬ所に放り出されたような感じなのだろう。


「ここはどこなんだ?おまえはだれなんだ?」


そのまま夕方になったので、夫のお家に連れて帰ることにした。


車の中では、しっかりと目は開いているが、状況が読めないと言う落ち着かない表情だ。


「なんだか、せまい、くらい、ゆれている」


いつも通り、ホームに着くと本当にほっとする。


若いお兄さんが、「お帰りなさい」と言って、おどけて敬礼するような仕草を見せた。


夫は、それに対して、


ふ・ふ・ふ・・


と、言葉で答えた。


慣れ親しんだ息子に会えて、「まったく、おまえは、ふざけてばかり・・」とでも言うやさしい父親の様に。


エレベーターに乗って、3Fの夫の部屋に入ると、本当に居心地が良くて嬉しくなる。


TVを点けて、夫にお別れの挨拶をすると、夫が私を見る目は、いつもと同じ目になっていた。


「いつものおばさん、ごくろうさん」









病気が進むと、もう何も考えてないと思われがちだが、


いやいや、


彼らは、間違いなく「考える人」である。






だりあかぜ





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