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いつでも里親募集中

おやつの時間に部屋に行くと、夫は眠っていた。


テーブルの上に、買って来たパイと、温かい日本茶と、果物と、カルピスを用意して、夫が目を覚ますのを待った。


あ、メグちゃん用のガムも、抜かりなく用意。


なのに、夫は目を覚まさない。



3時がトイレの時間になっているので、職員さんも入ってきたが、せっかく寝てるのを起こすのももったいないので、そのまま退散したもらった。


以前、眠っている時だけが救いだった時期がある。


奇跡的にご機嫌で眠ってくれた夜、どうかこのまま目が覚めませんように、と心の底から祈った。


本気でそう願った日の事は、今でもはっきりと思い出すことが出来る。


時が過ぎたからと言って、決して懐かしい思い出などにはならないけれど、


そんな事もあったな、と思い出しながら、夫の寝顔を見ていた。


夫は眠りながら眉間に皺が寄っている。


ここまで来ても、まだ何か苦しい事から抜け切れない人生なのかもしれない。


いや、単に物理的に皺が寄っているだけかもしれない。




4時を過ぎても目を覚まさないので、私とメグちゃんは、二人でそっとお八つを食べた。


こんなに目を覚まさないことは珍しい。


せっかく果物を剥いたのに、このまま退散か?と、時計と睨めっこしていたら、ようやく目を覚ます気配がした。


お父さん、起きた?お八つ食べようか。


と言うと、小さく頷いた気がしたので、本人の意思確認、と言うことにして、リクライニングを上げて、車椅子を窓際に持って行った。


夫は、いつもの様に、山盛りの巨峰と梨を美味しそうに食べてくれた。


良かった、これでなくっちゃね。


考えてみれば、夫と一緒に出来ることは、本当に限られている。


その中の、一番大きなことが、食べることだ。


食べてくれれば、それだけで嬉しい。


少しぬるめの日本茶で締めくくった後、二人で外を眺めた。


CDからは、「関白宣言」が聞こえてくる。


今日は、雲のあり様が何だか面白い。


白い雲と、黒い雲と、茜色の雲が、青い空の中で、競演している。


黒い雲の動きが一番早くて、どんどん空を塗り替えてゆく。


夫は、じっと外を見ている。


見下ろす道路では、犬を連れた人が散歩したり、子供たちが自転車に乗っていたり、車、バイク、バスも走っていて、皆、生きている、生活している。


夫の目が何を見ているのかは分からない。


恐らく、3Fから道路を見下ろすという事は出来ていないと思う。


それなら、目と平行の空が見えているのだろうか。


車椅子に座った夫は、しっかりと目を開いて穏かな表情である。


ただ、じっと前を見ている。


雲が面白いね、子供が遊んでるね、


と話しかけても、表情変わらず、じっとじっと前を見ている。


ふと、「明日の記憶」のラストシーンが浮かんできた。


じっと車椅子に座って表情の変わらない渡辺謙、


「お茶にしましょうか」と言いながら、運んでくる樋口加奈子、


壁には、子供や孫の写真が貼られている、


表情の変わらない夫を見ていると、なんだか、そっくりじゃないかと思った。


夫も、渡辺謙と互角のいい男だし。


でも、夫は、話題によってはちゃんと答えてくれる。


雲がきれい、なんて漠然とした話ではなくて、家の話、家族の話、仕事の話などを話しかけると、表情が動く。


そんな時は、CDの音量を下げて、いっぱい話しかける。


少し、肌寒くなったので、夫の膝には毛布をかけている。


話しながら、ふと思いついて、


手をつなごうか。


と言って、毛布の中に手を入れた。


夫は、はっきりと


うん


と言ってくれた。


毛布の中のつないだ手が、暖かい。


メグちゃんが、私たちを見上げて、ワンワン、と吼えた。


やきもちを焼いてるんだろうか。


仕方がないので、毛布から手を出して、メグちゃんを抱っこしてあげた。




007なかま1026
メグちゃん、大丈夫、いつも3人一緒だよ。









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