今日は私の誕生日。
思い出すのは、昨年の誕生日、
夫から貰った素晴らしいプレゼントのことだ。
今、思い出しても、やっぱり奇跡だったとしか思えない、素晴らしいプレゼントだった。
さて・・・今年はどんなプレゼントがもらえるのか?それとも何ももらえないのか?
恒例のモンブランを買って、3時前に夫の部屋に着いた時、2人の職員さんが、おむつ交換とお八つを済ませたところだった。
車椅子の夫は、凄いしかめっ面。

おむつ交換の後だから、仕方ないかなと思った。
「4日目で、便がまだ出てないので、こんな顔してます。様子を見て出なければ、今晩薬を飲みましょう。」
職員さんは、そう言って出て行った。
お父さん、今日はお母さんの誕生日だよ。モンブラン持って来たよ。そう言ってみたものの、夫の苦しそうな表情は変わらない。
どうも、タイミングが良くないようだ。
残念だけど、夫には、妻の誕生日の意識などないから、仕方がない。
毎年、そんなに素敵な誕生日が迎えられる訳などなくて当たり前だ。
そう思って夫の顔を見ていると、どうもトイレに行きたいと思っている様に見える。
4日目だから、溜まっている筈だ。
たった今、オムツを交換してもらったばかりだけれど、ベルを押し、職員さんを呼んだ。
若い男性の職員さんが来てくれて、夫をトイレに座らせてくれた。
無事に座り終えると、いつも私が1人で、様子を見ていることにしている。
職員さんは、その間他の仕事が出来る。
夫の様子を見ていると、明らかに便意を催している。
だけど、4日間溜まったものは、簡単には出て来ない。
夫のお腹をさすりながら、
お父さん、今日はお母さんの誕生日だから、たっぷり出して、プレゼントしてよ。もし、溜まりに溜まったものが山ほど出たら、凄いプレゼントなんだけどなぁ・・・と思った。
途中で、一度、職員さんが来て見てくれた時には、まだ出ていなかった。
自然排便は、難しいのかなと思いながらも、何とかプレゼントを貰いたいと思って、お腹をさすったり、頑張れ!コールをかけたりしていると・・・・・
便座に座ってから20分ほど経った頃、大きな音と共に、確実に排泄されたことが分かった。
良かったぁ~

続きがあるかもしれないので、もう少し座っていたが、夫の表情は、ようやく落ち着いたものになった。
もういい?うなづく
全部出た?うなずく
職員さんを呼んで、便座から夫を立ち上がらせると、便器の中には、何と何と・・・・ものすごく大量のプレゼントが入っていた。
一段落して、車椅子に座った夫を3人の職員さんと私で囲んだ。
今日ね、私の誕生日なんですよ。あんなにたっぷり出て、良いプレゼントもらいました。
そう言うと、皆で笑った。
「でも、あれがプレゼントじゃねぇ・・・・・」と職員さんが言った。
いえいえ、私にとってあれは素晴らしいプレゼントですよ。「そうですかぁ?」
そう言って、また皆で笑った。
そんな私たちの笑い声を聞いてかどうかは分からないけれど、夫が目を閉じたまま笑った。
「あ、笑ってる。」
夫が笑うと、その場の皆が笑う。
賑やかなのが好きだから嬉しいんでしょう。「それじゃあ、良い時間を。」と言って、職員さんたちは出て行った。
メグちゃんと三人で、ささやかな誕生パーティを開いた。
今日ね、お母さんのお誕生日なの。
夫は、ふざけた時に良くやっていた目の動きをした。
正面を向いて笑いながら、黒目だけで右側を向く。
驚いた。

今年の夫は、こんなやり方で、私へのメッセージを送ってくれたのだ。
61歳なの。そう言うと、一瞬、ん?と言う表情をした。
すごい?今度は、しっかりと頷いた。
もしかしたら、夫の中で、私はいつまでも20か30位で止まっているのかも知れない。
夫がくれた二つの誕生日プレゼント。
懐かしい目の動き

と、大量の

恐らく職員さんたちは、私が冗談を言っている、と思われたと思う。
確かに・・・・

がプレゼントだと本気で思える人は、極々少数だと思う。
でも、私は、
4日目で、薬を飲まずに、トイレで、あんなにたっぷり夫が出してくれた

最高のプレゼントを貰ったと、思っている。
心の底から、そう、思っている。


61歳、今年も素敵な誕生日が迎えられました。
嬉しいですよね。
先週の私の誕生日、寝る前に、今日私の誕生日だったのよ、と言うと、すまなさそうな顔をしてました。どうせ覚えてないしと何もしませんでした。
来年はどうなるかわからないのに・・・反省
来週は夫の誕生日です。
ウチもモンブラン買おうかな。
素晴らしいプレゼントを貰ったmomoさん、もう一度、おめでとう!!!