台所でお芋の味噌汁を作っていると、施設長のUさんが入って来られた。
今ちょっと宜しいですか?独特の栃木弁らしき物言いで言われた。
Uさんの話しは、こうだった。
夫をトイレに座らせるのに、抱えあげなくてはならないので、前から、職員から体の負担が大きいとの声が上がっていた。
職員が腰を痛める事を継続してやらせる訳には行かないので、この所は、自分たち管理職がやっていた。
だけど、やはり負担が大きいので、吊り上げるリフトを入れさせてもらえないだろうか。
夫の体重は60K超えた所をを維持している。
トイレに座らせるには、一人が正面から向き合って、夫の体を抱え上げている間に、もう一人が後ろからオムツを外し、便座に座らせる。
抱えあげられる夫は、足には全く力が入らず、むしろ膝を曲げた状態で座ってしまおうとする。
それを、オムツを外すまでじっと抱えて居なくてはならない。
そして、便座から車椅子に戻る時も、同じ事が繰返される。
見ていても、気の毒な位、大変そうだ。
リフトの導入は、必須と思える。
Uさんは、更に言いにくそうに言われた。
それがですね・・・・ちょっと高いんですよ。
介護保険が使えないので、レンタル代が、月13,000円です。
それから、吊り上げる時に、身体を包む布は・・・買取で・・・5万円・・なんですけど・・・。要介護4(4、なのです)の夫の介護保険の持分は、全部ホームに預けてしまっているので、ベッド、車椅子などは全て自費で借りている。
因みに、車椅子が月8,000円で、ベッドは4,000円。
リフトの13,000円と5万円の買取の布は、思ったよりかなり高めだ。
で、もしやめるとすると、夫はこれから先、トイレに座らせてもらうことが出来なくなる。
と言うことは、永遠にオムツの中で排泄をするということ。
夫の身体的状態が、もはや座っていることが出来なくなり、ずっとベッドで寝たきりならば、それも仕方がない。
だけど、夫は、まだしっかりと一人で座れる。
タイミングが合えば、ちゃんとトイレで排泄が出来る。
トイレでの排泄、
この、人間としての尊厳は、なんとしても出来るだけ長く維持したい。
せめて、足に力が入って、支えられている状態でも、辛うじて立つ事が出来れば良いのだけれど、それはもう諦めなくてはならないのだろう。
夫はもう、好きな所へ出かけることは出来ない。
お気に入りの洋服を買いに行くことも、好きな家具を選ぶ事も出来ない。
そんな夫に、私がしてあげられることは、ほとんど無い。
せめて、トイレに座ること、
Uさんも、それは出来るだけ続けたいと言われた。
ホーム側でも、そう言う気持ちで居てくれる事は、嬉しい事だ。
夫が快適に過ごす為の、秘密兵器が、また一つ増える。

無理。
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