世間は3連休。
朝からの雨が午後には止んで、さわやかな青空が広がっていた。
こんな日は、また、夫と一緒にドライブに出かけたい。
そんな逸る気持ちは、隅に追いやることにした。
本当は、
前回のお出かけが、あまりにも調子が良すぎたので、逆に怖い気持になる。
あんなに良いことは、もうないだろう。
今度連れ出して、酷いしかめっ面になったとしたら、ガッカリ感が大きすぎて、やっぱり出かけなければ良かった・・と思うかもしれない。
これから先の、私の記憶の中の、夫との最後のお出かけは、何としても平和で楽しい記憶でありたい。
そんな臆病風に吹かれて、今日はいつもの通り、ホームのお庭を散歩した。
いやいや、それで充分だ。
穏やかな夫と一緒に、散歩が出来るなんて、夢のまた夢だった頃を振り返れば。

ベンチに腰掛けて、しばらく過す。
する事は何もない。
メグちゃんだけが、お花の中で楽しんでいる。

いや、する事が何もなくて、ただ夫と一緒にそこに居ることを、私も何より楽しんでいる。
その後、いつもの様に駐車場を散歩しながら、ふと考えた。
ちょっとだけ、冒険してみようかな・・と。
ホームの敷地を出て、その辺りを歩いてみようかな・・・と。
本当に、ビックリするほどささやかな冒険だ。
たったそれだけの事なのに、ホームに入居して2年、今まで一度も外に出たことが無い。
安全な敷地から、公道へ一歩外へ踏み出すには、勇気が居る。
バカみたいだけど、たったそれだけの事に勇気が必要なのだ。
私にその勇気を与えてくれたの与えてくれたのは、夫の穏やかな顔だ。
目が開いて、外の風景を見ているかのような夫の表情だ。
行ってみよう。
車椅子を押して、外へ出た。
右に行った。
歩道の終わりに少しの段があるので、直ぐに引き返した。
今度は、左に行った。
直ぐそこの信号のところまで行くと、やはりほんの少しの段がある。
多分、少しだけ力を入れたら乗り越えられる位の小さな段だけど、私はそこで引き返した。
だから、ほんのちょっとの外出、目と鼻の先まで歩いただけ、
でも・・・
ささやかな冒険だったけれど、夫を外へ連れ出せたことで、満足だった。
何時の日か、もっと大胆に、ぐるーっとホームの建物を一周回ってみよう。
ささやかな夢だ。
そろそろ部屋へ入ろう。
玄関脇の自動販売機で、涼しくなってきたためか、温かい缶コーヒーが販売されているのが目に入った。
そうだ!
また、一つ夢を見つけた!
今度、ベンチに座って、夫と一緒に温かいコーヒーを飲もう!
本当に、
ささやかな、
夢ばっかり。
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