夫は相変わらず食べてくれる。
用意されたソフト食を完食し、持参したハンバーグも食べ、お楽しみのプリンも食べる。
以前のガツガツ感はないけれど、まず、これだけ食べてくれるから、とりあえずは安心出来るかなと思う。
本当は車いすに移したいけれど、まあ、そのままでも構わないので、ベッドのリクライニングを起こして、食べる態勢にする。
ベッドの横に、移動式の小さなテーブルを持ってきて、食事を置き、私はベッドに腰掛ける。
その姿勢で夫の口に食事を運ぶ。
食べる意思がある口の開き方をしてくれる時が一番嬉しい。
お父さん、もうすぐお家に帰るよ。美味しいもの作ってあげるからね。何が食べたい?
トロトロのステーキ食べようか?
そう言うと、夫が頷いてくれた。
珍しいことだ。
ステーキ、きっと食べたいんだろう。
よし、思いっきりお高いのを買ってあげよう。
そんなことを考えながら、夫と一緒に食事時間を過ごすのは、至福のひと時だ。
職員のお兄さんが入ってこられた。
このお兄さんは、メグちゃんが大好きで、メグちゃんも又お兄さんが大好きなのだ。
2人は、楽しそうに、しばらくの間戯れる。
お兄さんに、家に帰ることになった事や、やっぱり何があっても、食べてくれる内は、口から食べさせたいことなどを話しながら、
夫に向かって、
食べたいよね。
と語りかけると、夫がまた頷いた。
私とお兄さんは、ビックリして顔を見合わせた。
今日は、ちょっと頭が晴れているのかもしれない。
良いことばかり書いたが、それだけでもない。
9時過ぎ、帰り間際に酸素を測ると、数字は83、
随分低い。
この時間は看護師さんはいないので、誰にも頼れない。
先日H先生にご指導頂いた通りに、鼻から管を入れて痰の吸引をする。
たっぷり取れた。
もう一度酸素を測ってみるが、まだ数字が90に届かない。
枕もとの酸素チューブを夫の鼻につけて、1Lのスイッチを入れる。
因みに、痰の吸引も酸素を吸わせるのも、介護職員さんはしてはいけないことになっているらしい。
家族は良いそうな。
しばらくすると、94位まで数字が上がってきたので、少々心残りだったが帰ってきた。
あんなに良く食べる力が残っているのに、体自体はかなり参っているんだろう。
度重なる肺炎で、肺が弱っているに違いない。
H先生の判断で、抗生剤は点滴から経口摂取に変え、数日前からそれもなくなった。
血液検査もしばらくしていない。
後は、夫の生命力だけだ。
もうちょっとだから、今は死なないでほしい。
せっかく私が決断したのだから、ほんの数日でいいから、家で過ごす時間が欲しい。
今日は、施設長さんが居なかった。
まだ、何も進んでいない。、
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