外国語の会話で、文章全体は分からないのに、所々知ってる単語が出てくると、それが聞き取れただけで、なんとなく分かったような気になる事があります。
デイのない日の午後、私は早めに夕食の準備をしていました。
手際の良い奥さんだからではなく、「何か」をして動いていないと、背後霊が気になるからです。
たとえば、いすに座ってのんびりTVを見ていたりすると、すーっと背後霊さんが寄ってきて、情けない声で ん~、ん~、 と何かを訴えるのです。
何がしたい、とか どこかへ行きたい、とか、対処のしようがある訴えならば、何とでもなるのですが、この背後霊さんは、自分自身をどうして良いか分からないで、なんとかしてくれ~、と訴えてくるので、私としてもどうにもしてあげることが出来ません。
私自身が忙しそうに動いていると、背後霊さんもちょっとは遠慮してくれるのか、訴えのパワーが弱いような気がします。
比較的無事にAMが終わったので、PMも、何とか事故なく過ぎてゆくようにと願って、私は昼食の片付けの後、さっさと夕食の肉じゃがを、さも忙しそうに作っていました。
ようやく3時が近づいてきたので、午前中にダイエーさんで買ってきたモンブランを食べる事にしました。何であっても、「する事がある」と言うのは救われます。
ヒロくんは、モンブランが大好きです。ほぼ、毎日買います。
以前は、毎日ケーキなんて・・・と思って、理由をつけて買わなかったりしていた時期もあったのですが、最近は、ヒロくんが自分で買うと言う意志を示してくれる事が嬉しくて、毎日毎日ケーキ売り場の前を通ります。
もう、体に良いとか、悪いとか、あまり気にならなくなりました。
食べたいものを食べたいときに食べたいだけ食べてくれれば、それが一番、と思います。
あ~、外国語会話の話でしたね。
3時が近づいて、そのモンブランを食べようと思って、何か飲み物を入れることにしました。
その場にいたのは、私とヒロくんとメグちゃんの3人(?)です。私は、お湯を沸かしながら背後に立っているヒロくんに、聞きました。
「コーヒー飲む?」
「うん。」
これだけで話題が終わってしまうのはつまらないので、私は言葉を続けました。
「メグちゃんにもコーヒー飲むか、聞いてくれる?」
「うん。」
と、良いお返事でしたが、ヒロくんはじっと立ったままです。
「飲むって、言ってた?」私は、また聞きました。
「・・・・・・・・・」
どうも、ヒロくんは、私の言っている事があまり分かっていない感じです。
私は、ゆっくりと単語を区切りながら話しました。
「メグちゃんに、 コーヒーを 飲むかどうか 聞いて くれる?ほら、後ろに いるでしょう。」
メグちゃんは、いつもの様に、私の後ろにちょこんとお座りしています。
ヒロくんは、「どこ?」と言いながら、周りをきょろきょろしています。
「後ろ、後ろにいるでしょ。」
ヒロくんは、「うしろ」という言葉に反応して実際に後ろを見るのですが、どうもメグちゃんの姿が目に入らないようです。
確かに、床の色と保護色の小さなメグちゃんの姿は、見つけにくいと言えば、見つけにくいのですが・・・
ヒロくんは、冷蔵庫のドアを触ってみたり、ゴミ箱のふたを触ってみたり、不可解な行動を取ります。
「ほら、ここ、ここにいるじゃない。」と、私は振り返って、メグちゃんを指差しました。
「あ~。」と、ヒロくんは返事をしましたが、当初のお願いである、コーヒーを飲むかどうか聞く、と言う事はもちろんしてくれませんでした。
私は思いました。
ヒロくんは、「メグちゃん」とか「後ろ」とか「コーヒー」と言う単語は分かるけど、それらを組み合わせて私がしゃべっている「文章」はきっと理解できないんだな、と。
ヒロくんは、だんだんと日本語の国で暮らしながらも、言葉が分からない外国で暮らしている様な、不安な気持ちに包まれているのかもしれないですね・・・
いつも読むたびに、「そうそう、そうなのよね。」と相槌してしまうほど、我が主人と行動が似ているのです。
最初は目の前にある、TVのリモコンがわからない。
「目の前にあるじゃない」と、言ってもわからないのです。
仕方なく、私が取って「ほら。有るじゃない。」と言うと、分からなかった と言うのです。
初めは、視野が狭くなったのかな?とも、思いましたが、そのうちにリモコンという単語が何を指しているのか、分からないと、思う様になりました。
ペットしかり、箸しかり等等です。
我が主人の方が、ヒロさんより何歩か前を歩いているように、思いますが。
現在、主人の基盤は施設になっていて、その選択に後悔はしていませんが、momoさんのブログを読ませてもらうたびに、本当にトコトン頑張っていらして、感心をしています。
momoさんとヒロさんに、すこしでも安らかな日々がきます事を願っています。