あまりにもその場に馴染んでいた言葉に、うっかり「奇跡」を見逃すところでした。
私の予想通り、昨夜7時半に眠りについたヒロくんは、いつもの様に良く眠ってくれました。
過去にたった一度だけだったけれど、大洪水の失敗があったので、それ以来、明け方ヒロくんが目をあけた時には、トイレに行ってもらうことにしています。
今朝、5時に、私が気がついた時、ヒロくんは、一人でベッドから出て、リビングの方へ行こうとしていました。
「トイレ行く?」と、聞くと、素直に「うん」と言って、トイレに入ってくれました。
はい、こっち向いて。うんもうちょっと後ろねうんはい、座ってうん簡単、簡単。
いとも簡単にオシッコを済ませる事が出来ます。
ヒロくんが終ったら、私もトイレに入ろうと思って、ドアの前で待っていました。
オシッコを終えたヒロくんが、トイレから出て来た、その時。
おさきに。ヒロくんがそう言いました。
確かに、そう言いました。
そう言って、何事もなかったかの様に、またベッドへ入りました。
この、あまりにもその場に馴染んだ言葉に、私は一瞬、夫が認知症であると言う現実を忘れてしまうところでした。
封印されていた言葉の扉が、その瞬間だけ、どこからか吹いてきた暖かい春の風に吹かれて、すっと開いたのかもしれません。
扉は直ぐに閉じてしまいます。
でも、一瞬開いた隙間から、長いこと聞いた事がなかった言葉が流れ出てきた事に、大きな大きな喜びを感じました。
「おさきに」・・・・・か。
ヒロくんらしい、やさしい言葉だったわ。



コメント
44E355 さん
ぼーっと過ごす時があっても良いですよ。ゆっくりお過ごしください。
ラブちゃん、お母さんのこと、頼むよ!
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