K2病院は、3月末の人事異動の真っ最中で、ヒロくんお気に入りだったA先生は既におられず、次に主治医となってくださる予定のB先生は、まだ着任していないと言う、中途半端な時期でした。
診察してくださったC先生は、おばちゃん先生でした。
経過を話すと、
「私は代診ですので、とりあえずセロクエルを寝る前に一錠追加しておきます。眠れないようだったら、土曜日にB先生に受診してください。来られてると思いますので。」
との事でした。
少々、不安ではありましたが、代診の先生に事情を詳しく話すのは、それはそれで疲れるので、とりあえず一錠追加のセロクエルに望みを託す事にしました。
万一、眠れなくても、数日頑張れば土曜日が来る。そして、新しいB先生に早速入院をお願いすれば良いんだわ。
日赤のひめちゃんと決別して、いざと言う時に直ぐに対応してくれるK2病院に罹っておいて本当に良かった、と思いました。
その晩から、ヒロくんは、また大人しく眠ってくれるようになりました。
でも、やっぱり今までと何か違う。
確かに、眠ってはいるけど、熟睡感が違う。時々、起き出して、うろうろする事もある。
決して怒ったり、蹴ったり叩いたりはしないけど、やっぱりこれまでとは違うのです。
私にとってきらめく宝石にも匹敵していた「夜の熟睡」は知らず知らずのうちに何処かへ行ってしまっていました。
たったの1回でも2回でも、自分の都合ではなくて、夜中に起きなくてはならないことは、それが続くと大きなストレスとなり、体力も消耗してしまいます。どんなに短時間でも、です。
綾戸智恵さんがTVで話していた言葉が脳裏によみがえります。
「6年前から、夜、1時間ごとに母のトイレの為に起きていました。」
1時間ごとに・・・・6年間も!
この献身的な介護の結果として、彼女が倒れてしまったと言うのは、全く不思議がありません。
迫り来る嫌な予感と共に、昨年の真夜中の地獄の光景が蘇って来ます。
サンタさんに
片道切符をお願いした晩の事。
見たくもないヌ
ードショウを見せられた夜の事。
どれも、はっきりと私の脳裏に刻まれて、臨場感溢れる舞台劇となって蘇り、私の頭と心は、いつでも直ぐにそこに吸い込まれてしまうのです。
もう、嫌だからね。
もう、無理だからね。
もう、耐えられないからね。
もう、我慢するつもりはないからね。
地獄を生き延びた勇者気取りの私の心は、はっきりとそう宣言します。
そう、それでいいんだよ。本当に、それでいいんだよ。
家族みんなが生き延びる方法を探せばいいんだよ。
献身的な妻を演じる必要なんかないよ。
自分の人生を生きればいいんだよ。
家族を守れ、会社を守れ。
結局、それがヒロくんの為にもなるんだよ。
年度末で多忙の上に、招かれざるお客様である税務調査が入り、ベテランパートEさんが退職すると言う激動の片隅で、私は、夫を入院さる算段をしていました。
K2病院の外来まで様子を見て、入院を頼んでみようか。
ちょっと待って。今のこの状態なら、もしかしたらK病院でも受け入れてくれるかもしれない。
1月にお願いして、希望と
絶望をほぼ同時に与えられたK病院には、Yさんが頼んでくださったので、待機者リストに載せてもらっています。
1月のヒロくんの状態と、今では、随分違いがあります。
人の配置の関係で受け入れられないと言われたのだけど、今のヒロくんの状態なら、もしかしたら再検討してもらえるかもしれない。
ドキドキしながら初めて足を踏み入れた「病院」で、優しく暖かく対応してくださった医療相談員Tさんの笑顔と、院内に溢れていた暖かい空気が忘れられません。
K病院に入れたら・・・・・
せめても安心できる病院に入れてあげたい。
私は、迷わずK病院にTELをしました。
「はい、K病院です。」電話に出たお兄さんの声には、暖かい響きがありました。
良かった。やっぱり、K病院は入り口から良い。
そういう思いを再度持ちました。
Tさんに取り次いでもらい、「1月に見学に行きました○○と申します。」と、私が言い終わるのを待たずに、
「ご無沙汰してます。」と言う、Tさんの明るい声が聞こえてきました。
良かった。ちゃんと覚えていてくださったようです。やっぱり、K病院は良い。
その節は色々お世話になりました。いえ、こちらこそいろいろ済みませんでした。どうしておられるかとその後ずっと気になっていたんです。Tさんの言葉は、決して社交辞令ではない響きがありました。
私は、1月20日からの奇跡の回復振りを話し、K2病院に外来に通っている事と、3月28日からの不穏な空気を説明し、入院を再検討してもらう事が出来るかどうか打診しました。
Tさんは言われました。
2ヶ月間、とても調子が良く過ごされたという事を伺って、とても嬉しく思いました。
K2病院に罹っておられると言う事ですが、今回の入院のご希望は、K2病院ではなくて、当院へと言うことでよろしいのですか?はい、あの後、いろいろ病院を見学に行ったのですが、やはり、そちらが一番、それぞれの患者さんに目が行き届いていて、暖かい雰囲気がありました。
見学に行った時におられたおじいさんの笑顔が忘れられなくて、入院するなら、やはりそちらへお願いしたいと思ったのです。
今の所、そんなに差し迫った状態ではないのですが、ここからまた、昨年の様になって行くと嫌なので、早めに専門家にお任せした方が良いと思うのです。そうですか。ありがとうございます。いろいろな病院を見学された上で、当院をお選びいただいたこと、とても嬉しく思います。
それでは、明日院内で検討会議がありますので、そちらにかけてみて御返事させていただきます。入院の時期は、奥様としては、早い方がよろしいですよね?明日検討会議があるんだ・・・・早く事が進みそうな空気にちょっと戸惑いましたが、ここで止まる事は出来ないと思いました。
そうですね。決めた以上やはり早い方が良いと思います。Tさんは、明日の午後TELしますと言われて、電話を切りました。
K病院に入院させる事が出来たら、ヒロくんにとっても私にとっても一番良い道だと思われます。
でも、前回の勇み足には、
心底参ったので、今度は、何も期待しないと心に決めて、私は翌日の電話を待つことにしました。
4月1日の事です。
続く・・・
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