5月29日に、リフレックスと言う新しい薬を飲み始めてから、比較的順調だったヒロくんですが。
朝まで熟睡、と言う奇跡の様な晩は、めったにありませんが、それでも、あの「
怒り」は収まっていました。
それなら御の字です。
夜中に目を覚ましても、大抵はトイレに行って、立ったまま一人でオシッコをすると、そのまま又眠ってくれます。
時々は、しばらく部屋の中の徘徊を楽しむ事もありますが、とにかく変身さえしなければ、平和な夜と言えるのです。
リフレックスと言う、名前からして落ち着きそうなこの薬の効果が、出来るだけ長く続いてくれますように、と、祈るのみでした。
昨日は、夕方デイから戻ってきた後、久しぶりにお気に入りのダイエーに行きました。
ヒロくんは、以前の
マイブームだった頃と同じ様に、ブルーとグリーン系のものを手にとって、「これいいねぇ」と嬉しそうな顔をします。
私は、「良いねぇ。じゃあ買おうね。これも?良いよ。買おうね。」と、何でもかんでも買ってあげると言う、優しい奥さんを演じていました。
もちろん、いくら買ってもお金のかからない
エア買い物です。
買おうね、と言って、手にとっては元に位置に戻す。
でも、昨年と比べて、品物を元の位置に戻す時に、ヒロくんに見つからないようにしよう、と言う気を使わなくて良くなっている事に気がつきました。
私が、何をどうしても、分らないのです。
ヒロくんには、「いいよ。買おうね。」と言う優しい言葉だけで充分だったのです。
こんな小さな所にも、病の進行を見せつけられます。
でも、「あ~、よかった。」と言うヒロくんの嬉しそうな顔が見られたので、それで充分です。
このところ、自分から「ダイエーいこう」と言わなくなっていたので、久しぶりのお買い物でしたが、出かけてよかったと心から思いました。
夕食後は、以前のヒロくんが
大好きだったお笑いの番組があります。
多分、今はもう、見ても興味を示す事はないだろうと思いましたが、一応「今日は、お父さんの大好きなテレビするから一緒に見ようね」と言って、食後のひと時を過ごす事にしました。
TVが始まって、最初の15分ほど、奇跡が起こりました。
笑ったのです!
面白そうに!楽しそうに!!声をあげて!!!
私は、目の前の笑顔の夫にカメラを向け続けました。

久しぶりに見せてくれた「笑顔」だから、しっかり記録しておかなくては。
もしかしたら、人生最後の「笑顔」になる可能性だってあるのだから・・・・・
でも・・・・やっぱり、その奇跡の時間は、ほんのちょっとで終ってしまいました。
直ぐにTVを見ることに疲れたヒロくんは、立ち上がってうろうろし始めました。
なんだ・・・・がっかり・・・・
分かっていたけど、やっぱり、がっかり・・・・
この番組が終るまでずっと奇跡が続くと言う、あり得ない期待していた私は、とてもがっかりしてしまいました。
余計な期待は、余計な失望を招きます。
仕方がない、そんなに良いことが続くわけないんだから、笑顔が見られただけで充分だと思わなくてはいけないわ。
そして、眠りに着いたヒロくんでしたが、眠り際の私の失望が伝わったのかどうかは分りませんが、また・・・・・変身復活です。
0時半にトイレに行って、そこから1時間半、徘徊を楽しんで再び眠りに着いた彼は、次は3時半に目を覚ましました。
また、トイレに行った後、しばらくは普通にウロウロしているだけでしたが、だんだんと「怒り」が加わってきました。
あ~あ、本当に、ガッカリです。
今日の彼の敵は、トイレ前の壁の向こう側にいる様でした。
開くはずが無い壁を一生懸命開け様と努力し、結果、
おい、おい、ちょと~、ちょっとぉ~と、空間に助けを求めます。
私にはもう、誠心誠意、敵に相対する気力はありませんでした。
どうしたの?大丈夫だよ。と、ベッドの上から声をかけてみると、彼は、敵発見とばかりに、殴りかかってきました。
ころすぞ!流石に、背筋に戦慄が走る台詞ではありませんか・・・・
ふん、殺せるもんなら殺してみなよ、なんて言ってしまえば、ますます事態は悪くなるので、私は居なくなる事にしました。
布団の中にもぐりこんで、彼の視界から消えました。
布団の中には、もちろんメグちゃんが丸くなって私を待っていてくれます。
もう、訳の分らない人は放って置いて、メグちゃんと二人で寝よう。
敵を見失った彼は、また壁の向こうの見えざる敵に向かって行きました。
どんどん、と平手で壁を叩く音が響きます。
おれをころすのか?今夜の彼の頭の中は、生きるか死ぬかの修羅場が繰り広げられているのでしょうか・・・・かわいそうに。
本当に・・・・・
かわいそうに・・・・・
彼の窮地を救ったのは、だんだんと明るくなってきた外の空気と、いつもの
カップラーメンでした。
それにしても、笑ったり怒ったり、感情表現が激しい一日でした。

あ~、朝から・・・疲れた。
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