山の向こう側に沈む行く夕陽は、私のイライラをも一緒に鎮めてくれました。
土曜日は、朝10時に迎えが来て、午後3時半に帰ってきます。
「夫が居ない時間」「一人の貴重な時間」「仕事に専念できる楽しい時間」が、短い!
木・金、と会社に出られない日が続いたので、朝、行って見ると2日空けた分の仕事がたっぷり溜まっていました。
ふぅ~、と気が重いのではなくて、よし!やるぞ!と言う、気力が漲って来ました。
夫と家で過ごしている時の、100倍ほど早く時計が進み、まだまだ不完全燃焼のまま3時半が来てしまいました。
あ~あ、帰ってきちゃった・・・・もっと仕事していたかったのに・・・・・・
心の奥底のそんな思いは、きっと夫に伝わるのだと思います。彼は今、恐ろしいほど、相手の心を読む術を、無意識に身につけていますから。
30分ほどは、お八つを食べたりしながら大人しく椅子に座っていてくれましたが、直ぐに、ウロウロが始まりました。
単なるウロウロではなく、かなりソワソワ、どうしたら良いのかわからない、はい、はい、はい・・・・と音声付の、ぴったり密着型背後霊です。
車で、ダイエーに行けば、きっと収まるような気がしましたが、今日の私は、何だかそれが嫌でした。
何で、そんなにご機嫌ばかりとってあげないといけないの?いつもいつも、しもべのごとく、はべってないといけないの?
私は普通の時間帯で、ちゃんと仕事がしたいんだよ。
こんな気分です。
車なんか出してやるものか・・・・
無駄な努力だと思いましたが、メグちゃんの散歩に出てみました。
夕方の陽は、まだまだ暑く地面を照らしています。
案の定、彼はますますご機嫌が悪くなりました。
日陰を選んで、「こっちに来て、涼しいよ」と言って見ても、ふらふらとその辺りを歩き回り、私の近くまで来ると、「もういいよ」と怒った様に言ってUターンします。
ふ、この「もういいよ」の言い方・・病気になる前も、都合が悪くなると、同じ言い方をしていたな、と元気だった頃を彷彿させましたが、そんな事では、今日の私は収まりません。
こうなると敵の混乱ますます深まり、家の前の道路をあっちへうろうろこっちへうろうろして、多分、もう自分ではどうしていいのか分らない状態になっているはずです。
このまま、とんでもない場所まで歩いていかれると困るので、私とメグちゃんは家に入る事にしました。
敵は直ぐに後を追って入ってきました。
怖い顔の敵を見ていると、このままでは修羅場になると思ったので、時間はまだ5時半だったけど、早めの夕食を食べさせる事にしました。
夕食と言っても、レトルトのハンバーグを温めただけです。ヒロくんが大好きな神戸三田屋のハンバーグだと言う、自分自身への言い訳をつけて。
ハンバーグを目の前に置くと、敵は大人しく座って食べ始めました。
漸く、顔から「敵」らしき表情が消えました。良かった・・・・・
私自身も、やっと落ち着くことが出来ました。
でも、寝るまでにまだ時間がありすぎる。どうしようか・・・・
ドライブでもして時間をつぶそうか・・・・・それしかない。
ドライブ行く?
うん、いいよ
いそいそと車に乗る夫をみて、私はまた、イライラしてきました。
全く、調子いいよね。これで落ち着かなかったらもう終わりだからね。だいたい、誰のお陰でこうやって家で暮していけてると思ってるのよ。ちょっとはありがたいと思ってくれないと。
と、私は、夫が理解できないように、早口かつ小声でしゃべって、一人でストレスを発散しながら運転していました。
車は、いつもの山道に入りました。
カーブを曲がって、坂を上りきった時、
すごい!
と、ヒロくんが感嘆の声をあげました。
夕陽です。
折しも夕陽が、最後の輝きを放ちながら、正面の山に沈んで行く所だったのです。
深緑色の山の間に、キラキラと輝きながら沈んでゆく夕陽は、それまでの私のイライラも持ち去ってくれました。
そんなちいさな事で、イライラしなさんな、とばかりに・・・・・
古代より同じ営みを淡々と続けている大自然の前では、人間の怒り、悩み、辛さも、一瞬ではありますが、消えてなくなります。
いつものダムを一周して帰るまで、空は、夕陽が残してくれた茜色と、透き通った水色で、何とも美しく彩られていました。
これ、きれいだね
ヒロくんの目にも、夕陽がくれた贈り物は、ちゃんと見えていたようです。
とりあえず・・・・一件落着。
私の彼(結婚はしていない)は62歳で8年前に病名が付きました。
いつも共感できることばかりで、私も頑張らなくちゃと思うのですが、最近はやる気が出ないのです。
私が作り笑いしている時は、変な顔で私を見つめているのです。
なんだか疲れています。
もっとゆったりとした気持ちでいなくちゃ、と思う今日この頃です。
いつもありがとうございます。