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いつでも里親募集中

昨夜、夫はご機嫌だった。



8時から始まった懐メロ番組が、記憶にあるメロディを奏で始めると、手をたたき、歌い、踊り、絶好調だった。





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まるで子供の様な、ある意味情けなく悲しい姿ではあるが、今の私にとっては、何より嬉しい夫の姿である。


このままずっと一緒に見続けたかったけれど、9時を過ぎる頃には、疲れが見えてきたので、寝かせる事にした。


いつも通り、直ぐにベッドに横になったので、私はテレビの前に戻った。


1分も経たないうちに、夫が現れた。


こんな時は、普段は「大丈夫だよ」と言いながら、再びベッドへ戻す。


でも、昨夜は、起きてきた夫と一緒にテレビが見たかった。


夫が好きな歌が流れているので、一緒に見たかった。


もう一度、あの楽しそうな手拍子と音痴な歌声が聞きたかった。


それが、失敗だったのかもしれない。


彼の目は、テレビに向けられる事無く、彼の耳には大好きな歌が入って行かなかった。


彼は、そわそわと歩き始めた。あっちへうろうろこっちへうろうろ。


目的なく動き始めた。いや、動く事が目的だったのだろう。


私は、それでもじっと一人でテレビの前に座り続けた。


だんだんと、不穏が酷くなってきた。


「ねえ、なにやってんの?なんで?」


いつもの台詞と共に、座っている私に掴みかかってきた。


逃げよう。


もちろん、いつもの階段下シェルターへ。


早足で逃げる私を、彼もまた早足で追ってきた。


メグちゃんもあわてて着いて来る。


素早くシェルターに入ると、彼は案の定、直ぐに私を見失った。


シェルターと言っても、壁際に身体を寄せて、階段に座るだけ。


これだけで、彼の視界から消えることが出来る。


不思議な現象だ。


今までは、外が明るくなるのをじっと待っている、明け方の避難だったけれど、今回は夜の9時。


これから、漆黒の闇が訪れる時間だ。


こんな時間に避難した事は初めて。


つまり、こんな時間に、夫がせん妄状態に陥ったのも初めて。


これからどうしようか?


明るくなるのを待つ、と言う選択は出来ない。


息子が戻って来てくれないかなと、期待するが、あてにはならない。


膝の上の、メグちゃんのぬくもりに救われる。


彼は、相変わらず歩き回っている。


キャスター付きのイスが、あっちこっちへ彼のお供をしている音が響く。


せめても、テレビをつけっぱなしにしておいて良かった。


懐かしい歌が聞こえてくるので、気分が紛れる。


「なに、なに、なに、はやくしてよ」


「いいでしょ、どうして」


彼が、誰かとしゃべっている。


何の解決方法も見つけられないまま、一時間ほど過ぎた。


「おい、おい、おい」


彼が呼んでいる。


見つからない様に、そっと頭を上げて様子を伺う。


夫は今、何を思って、どんな気持ちで歩いているのだろう。


そして私は、彼が目の前に現れたらどうしようと、ドキドキしている。


まるで、ジェイソンから身を隠している映画のヒロインみたいだ。


硬い階段に座り続けているので、お尻が痛くなってきた。


待てども、息子は帰ってこない。


メグちゃんが、そろそろ何とかしましょうよ、とばかりに、膝の上で身体を動かす。








仕方がない・・・・・






私は、出て行った。



お父さん、そろそろ寝ようか。


普通に言ってみた。



夫の眉間には、苦しそうな皺が寄っている。


彼は、混乱から抜け出せないような表情のままベッドへ入った。


自分をベッドへ連れ込む、知らない女への不信感が表れていた。


でも、歩き疲れていたのだろう。直ぐに大人しくなった。






夫をベッドへ寝かせた私は、疲れ切って、そのままテレビの前に座った。


まだ、懐メロが流れている。


こんな時間に起こったせん妄に大きな恐怖を抱いた。








息子が戻ってきた。おそい!


いつになく遅くまでテレビを見ていた母を気遣ったつもりだろうか。


「お風呂入ってくれば」と言う。









「今まで大変だったの」


私は、顛末を話した。


息子と父親の話をするのは、久しぶりだ。


「12月だけでも入院させたら?」


仕事が特別に忙しい12月を気遣ってか、また息子が言う。


一旦、入院させたらもう二度と帰れないだろうね。

この生活も、ずっと継続してるから何とかなってるけど、一旦途切れたらもう元には戻れないでしょう。

そんな気力は・・・・ないね。














でも・・・・もう・・・いいけどね。


もう・・・・・・疲れた



言った事のない弱音を吐いてみる。


ついさっきのせん妄が堪えている。



かなり、限界でしょう


息子が言う。


別の病気だったらって考えてみれば


別の病気?


例えば、ガンだったら、入院して治療する訳だし


彼は、いつも冷静な意見を言ってくれる。





ガンとは違うでしょう。

本人が治療すると言う意識も持てないし、今の状態で入院したら、薬で抑えられるか、それでも暴れたら、拘束されるに決まってる。

そうなってこの先何年生きてゆく事になるの。



今日の母は、気弱である。


やはり、ついさっきのせん妄がかなり堪えている。


母の弱気に対して、息子は答えない。






すごく波があるよね


別の方から話を進める。やっぱり、男は冷静だ。


他の人の事は分からないけど、おとうさんは良い時と悪い時がかなり激しいと思うよ


私もその話題につられる。


8時台と9時台で、全然違っていたんでしょう


私は、8時に歌って踊っていた夫の姿と、9時にせん妄に陥った夫の姿を同時に思い浮かべた。


荒れるって言っても、せいぜい1時間位なんだよね


最近は、大体落ち着いているよね


うん、9割りは落ち着いて、酷く荒れるのは1割り程度かな


逆だったら、迷う事無く入院させられるね


9割荒れていたら、諦めもつくよ


厄介だね


うん、本当に厄介だ









いくら話しても、結論など出ない。


いくら智恵を出し合っても、解決などない。






それでも、私は少しだけ心が軽くなりました。




「もう11時だ。お風呂入ってくるね」



そして、夫は、朝まで熟睡してくれました。






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