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Author:momo


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いつでも里親募集中

私の夫と、私の母は、とても仲良しでした。






「仲良しです」と現在形で書けないのは、今はもう、仲良くする術を失ってしまったからです。


夫は、結婚した時に言いました。


「僕はmomoの両親を大事にするから、momoも僕の両親を大事にしてね」


何て優しい人だろうと思いました。


私が夫の両親にとって良い嫁だったかどうかは分かりませんが、夫はその言葉通り、私の両親をとてもとても大切にしてくれました。


おじいちゃん、おばあちゃんを伴った8人の大家族で、色々な所へ遊びに出かけた事は、私にとって、かけがえのない思い出であり、また、両親にとっても、同じだろうと思います。


その点に関しては、「もっと親孝行して置けばよかった」と言う後悔がありません。


それもこれも、全て夫のおかげです。


お出かけ大好き、遊び大好きで、行動力のある夫は、いとも簡単に大家族を引き連れて、あちこちへ出かけて、楽しませてくれました。




父は、自分の本当の息子(私の兄)よりも、夫と色んな話をするのを楽しみにしていたようです。


社会の話、世の中の話を、真面目に聞いてくれる夫に、嬉しそうに話していた父の姿が思い起こされます。



12年前に父が亡くなってからも、私たち夫婦は良く母を訪ねて行きました。


すっかり娘に戻って、惰眠を貪っている私を置いて、母と夫は、二人で仲良くおしゃべりしながら朝ごはんを食べていたりもしました。




そんな仲良しだった母と夫が、会えなくなってからどの位になるでしょうか。


最後に、夫を連れて新幹線に乗って母を訪ねて行ったのが、いつだったか・・・・・・


忘れてしまいました。


多分・・・・3年か、4年くらい前です。


病気が進行して、色々と不便が生じてきたけれども、まだまだ普通の生活が出来ている頃でした。


その後、急速な進行で、夫はおばあちゃんに会いに行く事が難しくなりました。


正確に言えば、私自身が、「新幹線に乗って夫を連れて行く」と言う冒険をする事が、不安になったのです。


夫は、おばあちゃんに会いたがっていました。


電話で話が出来る頃には、私は母の番号を押した受話器を、夫に渡しました。


「おばあちゃん!」と話しかける夫は、満面の笑みで、幸せそうでした。




そんなささやかな繋がりも・・・・・


悲しいほどに小さな喜びも・・・・・


病魔は、無情にも奪ってしまいました。





今ではもう、夫と母との繋がりは、私がお互いの様子を伝えるだけとなってしまいました。


母には、全部は話しません。


悪いことは話さないのが、今の私が出来る唯一の親孝行です。





私が、母とゆっくり電話で話せるのも、週に一度のお泊りの夜だけとなりました。


母は、いつも元気な声です。


「こっちの事は心配しなくても良いからね」


と言うのが、受話器を置く前の、母の決まり文句です。


本当は、心配な事、高齢ゆえの不安な事などが一杯あるはずなのに、母はいつも元気な声です。


我が家の現状を考えると、これ以上娘に心配事を抱えさせてはいけない、と言う母心である事は、分かりすぎるほど分かります。





母に最後に会ったのは、昨年の5月。


夫が、デイに通い始めた頃、大喜びで通ってくれて、お泊りも喜んでいたので、私は内心ワクワクしていました。


これで、しょっちゅう母に会いに行ける!


そう思って、心躍ったものでしたが、現実はそう甘くはなく、夫の精神状態はどんどん悪化し、私は自由が効かなくなりました。


夫も大事、母も大事。


でも、目の前の荒れる夫を、何日も預けて、母の元へ行く事は出来ませんでした。


せめて年に一回は顔を見に行こう。


ささやかな目標です。


小さな夢です。








ところが・・・・・






お正月、戻ってきた息子が、思わぬプレゼントをしてくれました。



我が家のPCとおばあちゃんの家のPCを繋いで、お互いに顔を見ながら話が出来るようにしてくれたのです。


おばあちゃんの家にPCがあるのは、同居している孫がいるからです。


おばあちゃんは、PCの電源を入れるだけ。


後は、こちらから遠隔操作が出来ます。


しかも、いくらしゃべっても無料だそうな。


これぞ21世紀!


IT分野の進化は、すさまじく早く、原始時代の精神科と対極にある様な思いです。





それはさて置き、8ヶ月ぶりに、私はPCの中に動く母の姿を見ることが出来ました。


いつも通りのニコニコした良い笑顔が、画面の中でこちらを見ています。


不思議な感覚でした。


「白髪のおばあさんになったでしょう」


髪を染めるのを止めた母は、そう言いました。


私が最後に会った時には、黒髪だったので、真っ白になっている母の顔を見たのは初めてでした。



その日から、私は毎日の様にPCの中の母と出会っています。


「大きな冷蔵庫買ったの?」


私の後ろに写っている冷蔵庫が見える様です。


「両開きなの?」


私は、立ち上がって、冷蔵庫の扉を開いて見せてあげました。



動くメグちゃんも初披露です。


「かわいい~」


犬が大好きな母は、ひ孫でも見るような笑顔です。




息子たちも、それぞれ顔を見せ、「おばあちゃん!」と語りかけました。




「顔が見られる」と言う事が、こんなに楽しく、嬉しく、また、安心に繋がるものだとは、予想外でした。


そして、私は思い付きました。


夫と母を会わせてあげよう。


その時、夫は、椅子に座ってTVの方を向いていました。


私は、PCを夫の方に向けて画面を見せ、「ほら、おばあちゃんが居るよ」と言いました。


夫は、画面の中のおばあちゃんを見ました。


PCからは、ニコニコしながら、夫の名を呼びかけるおばあちゃんの声が聞えています。


画面一杯の、満面の笑みです。


夫は、じっと「おばあちゃん」を見ています。


おばあちゃんの顔が分かったのかどうか、何を思ったのか、何を感じたのかは、分かりませんが・・・・・






たいしたもんだ





夫の口から、「たいしたもんだ」と言う言葉が出ました。


何ともその場にふさわしい言葉です。


元気そうなおばあちゃんが「たいしたもんだ」なのか、ITの進化が「たいしたもんだ」なのか、それとも他に何か「たいしたもんだ」と感じた事があったのか、夫の口から説明は聞けませんが、私にとっては、「たいしたもんだ」と言った夫が、「たいしたもんだ」!



後日、久しぶりに会った夫の印象を、母に聞いてみました。


母は、こう言いました。


「笑顔が消えていたね」


母が知っている夫は、いつも楽しそうに笑っていた筈です。


優しくて、気が利いて、ちょっとおどけて、しかも頼りになる、自慢の娘婿だった筈です。


4年近い歳月は、夫を別人の様に変化させました。









今、私には小さな目標が出来ました。


笑っている夫の顔を母に見せてあげよう。









かなり難しい目標ではありますが・・・・・・




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