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いつでも里親募集中

初めての面会に出かける車中は、入院する時よりもドキドキしていました。

その理由は、多分、私一人だったからでしょう。


水曜日に行けばいい、と言っていた息子に無断で病院に電話して、面会出来るかどうかの確認を取り、午後から行くことに決めたのは、わたしの独断でした。


今回は、子に従わなかったのです。


後から、事務員のOさんに聞いたところによると、息子は、もしかしたら私が夫を連れて帰ってくるんじゃないかと心配していたとの事。



まさかね。



いくらなんでも、そんな事は出来ませんが、自分に従わなかった親を見て、子は心配していたようです。





夫が一番好きだった塩味のせんべいを2枚と、コーヒー牛乳を持って出かけました。


一人で運転していると、想像は悪い方へ向かいます。


荒れて、暴れて、拘束されている夫の姿。


眉間に皺が寄った苦しそうな顔。


私を見ても、何の反応も無いかも、いえ、もしかしたら怒って殴りかかってくるかも。


あ~、やっぱり子に従って、明日一緒に来れば良かった・・・・・


などなど、思っている内に、車は病院へ到着しました。



もうすっかり慣れている病院なのに、何だか始めて来た時の様な緊張感がありました。


受付で名前を書いて、「面会」と書かれた青いバッチを胸に着けます。


エレベーターもあるけれど、2Fなので階段で行く事にしました。


一段一段上がって行くうちに、心を落ち着けよう。


無意識にそんな事を考えたのかもしれません。




ガラス張りのドアの前に来ました。


ほんの数日前に来たばかりです。


夫を一人で残してきた、ガラスの扉です。


インターフォンを押す前に、中をそっと伺いました。


夫の姿が見えないか探してみました。


いません。


インターフォンを押すと、直ぐに中から鍵が開けられました。


面会者は、まず手を洗わなくてはならない決まりの様です。


看護師さんが、「今、お連れしますからお待ちください。」と言われました。


夫は、何処にいるんだろう?


病棟はとても明るくて広く、面会に来ている家族と嬉しそうに話している患者さんが二組ありました。





遠くから、夫が二人の男性職員さんに連れられて歩いてくるのが見えました。


良い姿勢です。


身体の傾きは、なくなっていました。


歩く速度も、いつもの様に早足でしっかりとしています。


良かった。


近くまで来て、私を認めると・・・・・・







夫は、満面の笑みを浮かべました。


嬉しそうに、嬉しそうに、笑ってくれました。


言葉はありませんが、「なんだ、こんなところにいたのか」と言う顔でした。


それまでのドキドキが一瞬で消えて行きました。


私たちは、手を取り合って喜びました。


夫は、私の手を引いて、病棟を歩き回りました。


ここが、僕の新しいお家だよ、と、案内してくれている訳ではないと思いますが、そんな風にも感じました。


一通り歩いたので、「あっちへ行って座ろうか?お父さんの好きなおせんべい持って来たよ。」と言うと、夫はとても素直に、ソファに腰を下ろしてくれました。


それから約一時間ほど、夫は一度も立ち上がることも無く、至って穏やかに落ち着いて座っていてくれました。


今日のいでたちは、ブルーのポロシャツに、紺色のジャージのズボン、そして、ブルーの靴下に、クロのリハビリシューズです。


ここは、広くていいね?


うん


皆、良い人ばっかりでしょう?


うん


いい所に来れて良かったね。


うん


カッコいいシャツ着てるね。


うん



何を聞いても「うん」としか答えてくれませんが、それで充分です。


穏やかな表情が、全ての答えです。


丁度、午後の体操の時間となって、隣から音楽が流れてくると、夫は、調子の良い証拠である手拍子を打ち始めました。


何もかもが絶好調です。


ここ数日の心配から、一気に解き放たれた思いでした。


自分からは何もしゃべらない夫の横にじっと座っているだけ。


平和です。


幸せです。


病棟に入ってから、一時間半が経っていました。


目の前の穏やかな夫の顔をいつまでも眺めていたい思いでしたが、そろそろ帰らなくてはなりません。


帰るきっかけをどう作ろうかと思いました。


「そろそろ帰るね」「また来るね」どちらも不粋な言葉です。


黙って居なくなろうか?


私がそんな事を考えていると、夫が「そろそろ」と言って、自分から立ち上がりました。


何と言うタイミングでしょう。


最後の心配がここにありました。


別れ際は大丈夫だろうか?


こんなに穏やかに私を認めてくれたのなら、一緒に帰りたいとか、別れたくない、などの気持ちを持つことはないだろうか?


それも、杞憂でした。


上手に夫の手を取って下さった男性職員さんに連れられて、夫は、何の疑問も抵抗も無く、あちらへ歩いて行きました。


その男性職員さん、ちょっとIクンに似ています。


何だか、何もかもが上手く行きすぎています。


「本当に安心しました」と看護師さんにお礼を述べて、初めての面会は終わりました。




帰りは土砂降りの雨。


ここ数日の私の心配も、この雨と共に流れてゆく思いでした。









と、良いことばかりをまず書きましたが、看護師さんに聞いた入院来の夫の様子を書かなくては、公平ではありません。



私が一番気になっていた拘束について。


ドクターから拘束の指示があったのですが、皆で一時間位かけて話し合いました。


ご主人は、歩きながら、傍にいる人の手を取ったりされます。


それが職員ならそのまま一緒に歩けばいいのですが、他の患者さんだった場合に、トラブルになる場合があります。


そうなるとお互いに気の毒なので、やはり自由にフロアを歩いてもらうことは出来ないのです。



音楽が好きだと言われていたので、部屋の中で音楽をかけていれば、それでも良いのではないかと思いました。


今は、午前と午後1時間ずつ、フロアに出して、その時は職員が絶えず見ていてトラブルが起こらないようにしています。


それ以外の時間は、個室で鍵をかけています。


入り口の方を向いて、じっと立っておられますが、別に荒れたりすることはありません。


誰かが入ると、とても嬉しそうにされます。今の所、一度も拘束はしていません。





私は、M先生から、午前、午後、30分ほどフリーにするだけで、後はずっと拘束する、との電話を受けた時の衝撃を思い出しました。


そして、Nホームでは良くあった、職員さんを突き飛ばしたり、と言う様な行為も、今の所無いとのこと。


個室で鍵をかけられているとしても、本人が荒れていなければそれで充分だと思いました。





それから、もう一つの懸念、排泄について。


時間を見計らってトイレに連れてゆく様にしているのですが、どうもタイミングが合わなかったりして、上手く行かないことがあります。


昼間は、職員の人数が居るので、誰か一人が付いて、出るまで待っている事も出来るのですが、夜は3人しか居ないので、じっと付いていることが出来ないのです。


寝る前に出来なくて、そのまま寝てしまい、起きた時に間に合わなくて濡れてしまうと言う事があります。


出来るだけオムツは避けて欲しいと言われているので、そうしようと思っていますが、もしかしたらつけることになるかもしれません。


先ほども、職員が部屋に入ったら、便が出てしまっていたので、着替えをしたところでした。






う~ん・・・これは、難しい問題の様です。


家と、デイを往復していた時は、絶えず目配りが出来ていたので、粗相はめったに無かった。


だけど、人手に限りがある病院では、そこまで一人にかかわる事は難しい。


となると、オムツデビューも時間の問題か?


再び在宅に戻ることを考えた時に、トイレで排泄できると言うことは、とても大きな要件だけど、これは贅沢な希望なんだろうか?






色んな問題がこれからも出てきて、100%これで良かったと思うことはないだろう。


自分が看て上げる事が出来なくなって、手放した以上、求めることが多すぎてはいけない。


妥協しなくてはならない事も一杯あるだろう。





そんな事を考えながらも、今日の夫の満面の笑みが続くのであれば、そんな事は小さなことなのかもしれない、と思った。



かみなり

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