今日は、面会に行かなかった。
昨日、病院で目にした光景があまりにショックだった。
個室が空いていなかったのだろうか、それとも目が届きやすいように、そこにベッドが置かれていたのだろうか。
看護ステーションの前の広い廊下に、そのベッドはあった。
もしかしたら、夫よりも若いかもしれない男性が横になっていた。
その男性は、ベッドに横になった状態で、両手を柵に縛られていた。
銀色の太目のベルトだ。
拘束の現場を始めて見た。
彼は、動かすことが出来る両足を精一杯持ち上げ、何か大きな声で叫んでいた。
誰も答えない。
歩き回る夫に付いて、その脇を何度も通った。
心が潰れそうだった。
その男性の直ぐ前には、車椅子に座ったおばあちゃんが居た。
おばあちゃんも、両手を縛り付けられていた。
やはり、同じ銀色のベルトだ。
傍を通る人に、「ちょっと、ちょっと」と呼びかけている。
「待っててくださいね」と看護師さんが答えている。
昼になった。
ベッドの上の男性は、背中だけ持ち上げて、座った角度にしてもらい、看護師さんに食べさせてもらっていた。
両手は縛られたままだった。
大きな口をあけて食べている。
この病棟の患者さんは、男性が多い。
それも、比較的若い人が多いように思える。
大抵の人は、穏やかな表情をしている。
普通にしゃべり、普通に笑っている人も一杯いる。
何も言わなければ、病気だと分からないかもしれない。
反対に、とても表情が暗い人も居る。
目が会うと、怯えるような目を返してくる。
皆、ここに至るまでに壮絶な人生があったのだろうと思う。
一人一人の悲しみ、苦しみ、絶望、それらが入り混じった病棟の空気を吸うのが、私はしんどい。
面会に来ている家族の人は、皆、明るく笑っている。
「また来るね。」と言って、笑顔で帰って行く。
私もきっとそう見えているだろう。
夫は、今もまだ午前午後、一時間ずつホールへ出してもらえるが、それ以外は個室で施錠されている。
こんな病気・・・・・消えて無くなれ!
つぶれかけた心も、深呼吸で少しずつ膨らませて下さい。決して、つぶれないように…。
ワタシも、そうやってやっていってみます。