面会も、回数を重ねると、いろんな事が見えてきます。
夫の他の患者さんたちの顔が、馴染みになって来ました。
お、今日はあのおじさん落ち着いて座っている、
とか、あのおじさんは何時もボーダー柄のシャツを着ている。
この前話しかけてきたおじさん、何処に居るかな?などなど、病棟の空気にだんだんと慣れてきた自分がいます。
認知症の進み具合を見ると、夫は上位に位置するのではないかと思います。
遠めに見ていると、普通に会話して、普通にTVを見ている様に見える方が大多数です。
その中で、初めて面会に行った日から、印象に残ったおじさんがいます。
仮にAさんと呼びます。
Aさんは、夫と同じ位の年齢に見えます。
初めて私が面会に行った日、Aさんは病棟を一生懸命歩いていました。
殆どの人が、落ち着いて座っていたので、たまたま目に付いただけかもしれません。
目が会うと、Aさんは、怯えたような視線を返して来ました。
「大丈夫、怖くないよ」と、声を掛けたくなる程でした。
暗い顔です。
その後も、いつもAさんは、同じ様な暗い怯えた顔で歩いていました。
何かが怖くて、そこから逃げようとして一生懸命歩いている、そんな風に感じました。
何回目かの面会の時、Aさんは車椅子に乗っていました。
次の時は、姿が見えませんでした。
夫に付き添って歩いていると、大部屋の廊下側のベッドに横になっているAさんの姿が見えました。
その次に見かけたのは、やはりベッドに横になって、点滴をしてもらっている姿でした。
暗い表情、と言うより、表情なき表情です。
私は思いました。
Aさん、急に病気が進んでしまったのかもしれない。
夫よりも、進んでいるのかもしれない。
今日は、3時半頃病院に行きました。
また、奥さんに会いに来ていたHさんと出くわしました。
その後、私位の年齢の女性が入ってきて、奥の病室の方へ歩いて行かれました。
暫くして、彼女は、ご主人を乗せた車椅子を押しながら、面会スペースにやって来ました。
目が合ったので、お互いに会釈をしました。
車椅子に乗ったご主人も、つられた様に笑顔で会釈をして下さいました。
その顔を見てびっくりしました。
Aさんだったのです。
表情の無かったAさんが、笑っていたのです。
隣のテーブルに座った、奥さんとAさんは、「会話」を始めました。
Aさんは、普通にしゃべっています。
あの、表情の無かったAさんが、まるで別人のような穏やかな良い顔になって、奥さんとおしゃべりしているのです。
施設の職員さんが、自分たちがどんなに一生懸命やっても、家族が顔を見せた時の笑顔には叶わない、とは、良く聞いていましたが、目の前で、その実演を見た気分でした。
私は、「Aさん、奥さんが来てくれて良かったね」と、心の中で話しかけました。
さて、目の前の我が夫。
いつものおせんべいとポカリを食して、その後、ずっと目を閉じている。
声を掛けるのも不粋なので、そのままそっと帰ってきました。
あ~、でも今日は、「お父さん、来たよ。」って言ったら、「よかった、うれしい」って、笑ってくれた。
看護師さん、きっと、「奥さんが来てくれて良かったね」って、思ってくれただろうな。
最近読ませていただいて、共感するところがたくさんあります。複雑ですよね~。家族もずっと顔を突き合わせていると笑顔がでないのに、デイや他人に介護してもらうと、本人もわかってるのか、家族に笑顔が出たりして。いないときの表情、母もAさんのようにうつろな顔をしているのかな?
この病気は本人が自分の気持ちを直接言えないのが難しいですよね。 施設やデイサービスに満足しているのか、嫌なのか。でも嫌でも送り込まなければいけないのがちょっと辛いけど、仕方ないですね。。。