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花かご

久しぶりに休暇が取れた三男と、病院で待ち合わせをした。


少し遅れて私が病棟に行くと、ガラス越しに、ひと際華やかな花かごを挟んで、夫と息子が座っているのが見えた。


息子は、父親に目を向けて話しかけている。


夫がどんな表情をしているのか見えなかったが、遠目に眺めるその光景は、普通の面会風景に見えて、何だか新鮮だった。


そう言えば、この病棟で、お見舞いの花を見たのは初めてかもしれない。


看護師さんの説明を聞いて納得した。


病室に置いておくと、誰か他の人が持って行ってしまったりするので、「見るだけ」にして持って帰ってもらっている、との事。


なるほど。


夫は、目の前に置かれた綺麗な花に、何回も手を伸ばした。


久しぶりに目にする色鮮やかな花に、何を思ったのだろうか。


ほんの少しでも、心が癒されてくれたのなら、息子も持ってきた甲斐があっただろう。


何度目かに、夫は、花かごを包んであるセロハンを破り始めた。


やっぱり置いておく事は出来そうにない。





今日の夫は、体が真っ直ぐに伸びていた。


一昨日までは、いつも左側に傾いて、しんどそうだったのに、今日は、良い姿勢だった。


薬が体に合って来たのかな、と、一人で思う。


夕食の時間が迫っていたけれど、持ってきたおやつを出した。


「食べる?」と聞くと、「うん」と言う。


一口で口に入る、小さなシュークリームをパクパクと美味しそうに食べた。


ポカリも全部飲みほして、空になったコップを傾けた。


次からはもっと大きめの水筒にしよう。




表情もとても落ち着いていて、今日は良い感じだ。


正月以来、久しぶりに出会う三男なので、彼の前で穏やかな顔で居てくれた事が、私はとても嬉しかった。



今日は、凄く落ち着いて良い顔してるわ。


でも、お母さんが来てから落ち着いたんだよ。


え、そうなの?それまではどんな感じだったの?


両側を支えられて歩いてきて、椅子に座るのもやっとだった。




う~ん、やっぱり、夫にも、表の顔と裏に顔があるのか。


私が来て落ち着くと言うのは、それはそれで嬉しいけれど、それでは普段の私が居ない長い時間は、そうではないと言う事か。


口には出さないけれど、三男は、私が来る前の父親の姿に、驚いたのかもしれない。


その後の夫は、調子良さを維持し、右手にスプーンをにぎりしめて、運ばれてきた、「喉に優しい夕食」を、凄い勢いで完食した。


見事な食べっぷりは、元気だった頃を偲ばせた。


私は、


甘いものは、滅多に食べられないだろうからね。


と、誰にともなく言い訳しながら、デザートに、シュークリームを二つあげた。





お利口に、オシッコを済ませた夫を真ん中に挟んで、私たち三人は、ソファーに座った。


私と息子は、いろんな事をしゃべった。


夫の目の前を、妻と息子の会話が飛び交ってゆく。


話の内容も、語られている言葉も、何も分からないだろう。


両側に居るのが、妻であり、息子であると言う事が、分かっているのかいないのか、それも分からない。


ただ、それは、もう、別に、いい、と思える。




病棟に入ってから、いつの間にか2時間が経っていた。


やや名残惜しそうな息子を促して、私たちは病棟を後にした。




息子が持ってきてくれた素敵な花かごは、私が貰っておこう。


お花




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