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いつでも里親募集中

帰宅

結論から言うと、初の帰宅は、夫にとって、プラスでもなければ、マイナスでもなかった。


私はと言えば、期待していなかったと言えば、嘘になる。


いや、実は内心大きく期待していた。


家に帰って、家を思い出して、もしかしたら、私が見たいと切望している笑顔が出るかもしれない。


病気が良くなるなどとは思わないけれど、少しは落ち着いて穏やかな顔で、ゆっくりと寛いでくれるかも知れない。


もしそうだったら、これから度々連れて帰ろう。


夏場は仕事も忙しくないから、週に2回ほど休みを取って・・・など一生懸命皮算用をしていた。


結果は、そんな事、必要がなかった事が分かっただけだった。







午後1時過ぎに迎えに行った時、夫は、ホールを歩き回っていた。


息子が言う。


「なんか、凄く馴染んでる。」


持って行った靴を履き替えさせてもらって、トイレに行って、いざ出発。


1ヶ月振りに夫の目の前の「開かずの扉」が開いた。


エレベーターで1階に下りる。


病院の外へ出る。


夫と腕を組んで、病院の外へ出た、と言う現実に、私は少なからずわくわくしていた。


ほら、お父さん、外の空気だよ。


白いマイカーが見える。


覚えているかな?


辛うじて助手席にお尻を下ろしてくれたので、足を片方ずつ持ち上げて、乗車完了。


ゆっくりと発進させる。


外の景色はどう?


どんな風に見える?


始めの頃、夫は、外へ出た喜びや、もの珍しさを多少なりとも感じていた様に思える。


それとも、妻の欲目か。


暫くすると、目を閉じてしまった。


もったいない、外の景色、もっと見て!


家に近づいて、馴染みの山々が見えてきても、わくわくしているのは、私だけの様だ。


家に到着して、所定の位置に車を止めて、ドアを開けると、夫は、まるでデイから戻ってきた時の様に、自然に両足を車の外へ下ろした。


馴染みの動作が、まだ身についている、と思って嬉しかった。


ところが、車の天井にぶつからない様に、頭を下げて外に出る、と言う行為を忘れているようで、頭が車の上部にぶつかってしまい、動けなくなった。


お留守番してたメグちゃんが、走り出てきて、私たちの足元でちょろちょろしながら、喜びを全身で表現してくれているが、夫はそんな愛犬の姿が目に入らない。


「頭、下げて」と言って、手で頭を抑えてみたりしたが、夫は、ぶつかったままの頭で、外へ出ようとするので、当然、おでこが痛い。


顔が苦痛に歪んで来た。


困った。


せっかく家に着いたのに。


一旦、仕切り直しをして、もう一度足を車に乗せた後、今度は足より先に頭を下げるようにしたら、何とか車外へ出る事が出来た。


次の関門は、すぐ目の前にあった。


階段だ。


この1ヶ月、段差のない歩きやすいフロアだけで過ごしていた夫の足は、階段の登り方を忘れていた。


右、左、と一つずつお手伝いしてあげて、何とかデッキまで到着。


次は、家の中に入るために、あと一つの段差がある。


入院前は、ここで靴を脱ぐ、と言う事が出来なかったので、いつもいつも土足のまま家の中を歩いていた。


今日はどうだろう?


無理なら、また、そのままでもいい。


でも今日は、段差の前で立ち止まった夫の足から、靴を取り去ることに成功した。


そして、久しぶりに夫が家の中に入った。


夫がいる。


家の中に、夫が居る。


普通なら当たり前の出来事が、私には奇跡に思えた。


「ほら、お父さん、お家だよ。お家に帰ってきたんだよ!」


夫が、どの程度理解できているのか、残念ながら分からなかった。


椅子に座らせた。


入院以来、片付けていたCDを出してきて、一番好きだった音楽をかけた。


夫は、目を閉じたまま頭を揺らした。


ちゃんと聞いている様だ。


おやつを食べよう。


美味しいケーキ屋さんに寄ったのに、お休みだったので、隣のコンビニで買ったティラミスだ。


温めのコーヒーとティラミスを、夫はがつがつと食べた。


「うん、これ」と言ったのは、「うん、これは本当に美味しい」と続けたかったに違いない。


ケーキ



その食べっぷりは、面会の時を思わせた。


家でも、病院でも、同じ勢いで食べた。


食べる事が終わると、する事は何もない。


爪が少しだけ伸びていたので、切ってあげた。


夫は、椅子に座ったまま目を閉じている。


帰宅



家の中に夫が居る。


私の目の前に夫が居る。


何という貴重な光景だろうか。


静かだ。


CDから流れる、夫の好きな歌だけが、その静寂に溶け込んでいる。


この、限りある平和なひと時を堪能していたのは、私だけかもしれない。


暫くすると、夫は立ち上がって歩き出した。


私は、寝室に連れて行ったり、窓から外の景色を見せたりした。


窓の外


夫の目、夫の脳裏に絶対に焼きついている筈の、この風景を、今の彼は、どんな風に見ているのだろうか。



家に着いてから2時間が経っていた。



だんだんと落ち着きがなくなって来た様な気がする。



そろそろ戻ったほうが良さそうだ。



靴を履いて、階段を降りて、車に乗り込む一連の動作は、比較的楽に出来た。



病院へ帰る道中、夫は信号で車が止まると「はやくして」と言った。



デイの職員さんを散々困らせた、なつかしの言葉だ。



以前の様に荒れたり、暴れたりすることはもうないけれど、動かない今に、何らかの不安や不快を感じるようだ。



外の景色を眺めたり、それを楽しんだりすると言うゆとりはなく、今自分が車に乗っていることや、病院へ戻ることなどが理解出来ずに、何が何だか良く分からない不安に陥っていると感じられた。



そして、病院について、いつもの病棟へ入った時、何故だか、とても安堵したのは私だった。



夫は、家に戻ったことや、また病院へ帰ってきたことなど、理解していないに違いない。



靴を履き替えさせてもらって、直ぐに立ち上がると、傍にいた看護師さんの手を取って歩き出した。



そんな夫の姿を見て、この外出が、彼にとってはプラスでもなければマイナスでもなかった事が分かった。



私は思ったままを息子に言った。



「お父さんは、ここに馴染んでるね」



確かに、今の夫は、家よりも病院に馴染んでいる、と言える。



初帰宅、息子は「思った通りだった。」と、淡々と言うが、私は、そんな風に、あっさりとは割り切れないものを抱えてしまった。


確かに、夫は家に戻って来た時、「ここが自分の家だ」とう言う認識があったように思う。


言葉は何もなかったけれど、そんな気がした。


それなりに喜んでいる様にも感じた。


ただ、もしあったとしても、そんな感情は、家だから心が落ち着くとか、穏やかに過ごせる、とか、そう言うものとは別の所にあるのかもしれない。


そして、3時間ほどの外出の時間があってもなくても、病院で過ごす夫の日常には、何も変化が無い様に思える。




夫にとっての幸せとは何だろう?



目の前の道は何処に続いているのか・・・・・



わすれてる



コメント

なんだか 思い出しました

以前お邪魔しました gavo-22ともうします。

私の母を施設に入れると決めたとき
私 2キロしか離れていない施設に車で送る途中
母親が長いこと仕切っていた会社の前を通りましたけれど

まったく

まったく 何十年も椅子を温めて来た 自分の主人と(私の父親ですね)結婚してすぐに始めた人生の大半を過ごした場所を見向きもしなければ 反応もありませんでした。

長年付き合ってきた床屋さんにもよりましたし
親友のところにも寄りましたけど

なんというか

なんだかね

今 母親は老健施設で6年目にはいりまして
かなり長老的存在ですが おやつにしか興味がありませんでね

なんていうか うまく言葉にならないのが申し訳ないんですが

介護者というのは
どんなに他の身近といえる家族がいても
1人なんだなあと 今日も つくづく思いました。

血を分けた子供でも 親に対して同じではないのだなと
たったひとりの肉親でさえ
家庭を持ってしまったら そちらのほうがすべてにおいて大事になるし
それはそれでいいんですが

はらをくくっているつもりでも

この淋しさはなんだろうと 折れそうになりますが

一人ひとりの気持ちが違ってそれでいいと
こちらのサイトをロムしながら
どうか お気持ちが折れてもなんとか
持ちこたえてくださいませと
お祈りしているのです。

それは 私自身に言い聞かせているだけのことなんですけれど。

gavo-22さん

こんにちは。

介護も長くなると、自分も、そして周りの人たちも、取り巻く状況も変わるし、それに応じて考え方や感じ方がが違ってきたりするのは、仕方がないことかもしれませんね。



以前、ここで先輩に教えていただいた事があります。

「やり遂げてこその介護」「最後までやり遂げること」


家はまだまだ遠い道のりです。心折れずに、最後までやり遂げたいものです。

gavo-22さんも、どうぞお元気で!

ありがとうございました。

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