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いつでも里親募集中

私には、団塊の世代、夫と同じ24年生まれの兄がいる。

離れた所で暮らしているので、滅多に出会う機会は無い。


兄は、今までに、仕事や私用で、我が家の近くに来る事があったが、「泊りに来ても良いよ。」と言えなくなってしまってから何年も経っていた。


先日、久しぶりにこちら方面に来ると言う連絡が入った。


「泊りに来ても良いよ。」


随分久しぶりにこの言葉を言う事が出来た。


夫が家に居た時は、彼のご機嫌伺いが何にも勝る最優先事項だったので、その為に、随分色んな事を捨ててきた。


そんな「夫、命」のピリピリした生活から、一歩引いて、「自分の都合で、好きな時に逢いに行けば良い」ゆとりのある生活になった。




夫を入院させて、私の生活は随分変わったけれど、一番感じるのは、家族との会話が復活した事だ。


夫が家に居た頃は、一緒に暮らしていた息子たちとも、あまり話が出来ていなかった様に思う。


何もかも、お父さん中心の生活だった。


それで良いと思っていた。


夫が居なくなってから、私と息子たちは、いわゆる「普通の生活」が復活して、そして、気が付いた。


今まで、如何に会話をしていなかったか、と言う事に。


母親と息子なので、ぺちゃくちゃおしゃべりすると言う事ではないが、時々、「あ、なんか普通だわ」と感じて
密かに嬉しかったりする。






久しぶりに出会った兄とも、一杯話しをする事が出来た。


面会に行って良いかどうかを気にしていた兄を伴って、病院へも行った。


兄が夫に会うのは、何年振りだか分からない。


精神科の病院へは行った事が無い、と言う。


そうだろう。


行く必要に迫られなければ、行かないに越した事は無い。





夫は、相変わらずだった。


歩いていた。


私を見ると、両手を広げて近づいて来てくれたが、そのまま又歩き出した。


何時も通り笑顔は無い。


「お父さん、今日は兄ちゃんと来たよ。」


反応はない。


「久しぶりです」


夫の顔を覗き込んで話しかける兄を見ても、これと言った反応はない。


廊下を行ったり来たり、しばらく歩いた後、やっと座ってくれた。


座ってくれればこっちのもんだ。


お昼が近かったけれど、ミニシュークリームを6個と、おせんべいを2枚平らげた。


「落ち着いた良い顔になって来たね。」


兄が言った。


私がいつも感じていた事と同じ事を言ってくれたので、やはりそうなんだと思って嬉しかった。


座って美味しい物を食べると、穏やかな顔になる事は間違いなさそうだ。


何を語りかけても、返事は無い。


そして、何時も通り、じっと眼を閉じてしまった夫を残して、私と兄は、そっと帰って来た。





車に乗り込んでから聞いてみた。



どうだった?びっくりした?


元気だったころの夫しか知らない兄は、少なからずショックを受けたのではないかと思った。



ところが、兄はこう言った。


いや、全然。凄く、穏やかで落ち着いていて、幸せそうに見えたよ。







「何もかも分からなくなる幸せ」



もし、そんなものがあるのだとしたら、夫はそこに向かって、一歩、一歩、歩いているのだろうか。






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