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火の玉

夫と一緒に暮らしていた頃、私の心の中には、火の玉があった。



出来るだけ心の奥底に鎮めておきたい代物だったが、時として激しく燃え上がった。


「momoさんが、ご主人のことを嫌いになる前に、距離を置くことが必要です。」


ずっと前に、私が信頼している市の職員さんに言われた言葉だ。


病に冒され、人格すら変わり、夫であって夫で無くなって行く夫と共に暮らす毎日は、過酷だった。


好きだから、とか、夫婦だから、とか、そんな甘い感情で乗り越えてゆけるような現実ではなかった。


私の心の中の火の玉は、事あるごとに燃え上がり、何度も、私自身を溶かしてしまいそうになった。


ギリギリの所で、救ってくれたのは、皮肉にも夫の暴力だった。


もう、これ以上は・・・と言う決断が出来たのも、夫自身の見るに耐えない荒れ果てた姿があったからだ。


今でも時々思う。


もし、夫があんなに激しい変貌を遂げないで、比較的穏やかな時間が多かったら、今頃どうしているだろうか、と。


相変わらず毎日デイに通いながら、ギリギリの所で暮らしていたのだろうか。






夫は今病院にいる。


私は、自分の都合の良い時だけ会いに行けばよい。


調子が悪いときは、看護師さんに任せて、直ぐに帰ってくれば良い。


何て、楽なんだろうかと思う。




それなら、嘗て私の心の中にあった火の玉はどうなったのだろうか。


消滅したのか?







火の玉は、静かに静かに燻っている。




今日、病院から電話があった。


夫のご機嫌が悪く、廊下に寝転がってしまったので、車椅子に座らせた。


暫くして車椅子ごと倒れている夫を発見した。


血圧を測って、医師の診察を受けさせたが、異常はなさそうなので様子を見ることにした。



こう言う報告だった。







可哀想に。


状況は分からないが、車椅子ごと倒れてゆく夫の姿が、スローモーションで浮かんできた。


さぞ驚いただろう。


訳が分からない恐怖に襲われたことだろう。


見つけてもらえるまで、何分、何秒、掛かったのだろうか。


その僅かな時間、夫は倒れたまま何を見ながら、何を感じていたのだろうか。


可哀想に。




言葉を失くした夫


笑顔を忘れた夫


喜び、楽しみ、生きがい、何も無い。



「長く生きることが幸せではない。短くても良いから、やりたい事をやって充実した人生を送りたい。」


発病する数年前に言った彼の言葉が忘れられない。



あの頃の夫が、今の自分を見たら何を思うかは明白だ。



それでも命尽きるまで、時を刻み続けなくてはならない彼の人生を思う時、私の心の中の火の玉は、久しぶりに酸素を得たかのごとく、静かに静かに炎を上げる。





やっぱり、この病気には・・・・




なりたくなかった。




この境地を超える日が、いつか来ることがあるのだろうか。











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