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いつでも里親募集中

昨日の私は絶望的だった。 それは、朝、M先生から掛かってきた一本の電話から始まった。


「今朝から熱があります。誤嚥性肺炎と思われ、食事も取れないので、点滴して内科的処置をします。

点滴を抜いてしまうといけないので、ベッドに拘束します。

直ぐに命にかかわる事はありませんが、状況によっては転院も考えています。」





なにそれ?




「色んな事が急すぎて、何が何だかよく分かりません。」


そう言った私に、M先生は「仰るとおりです。」と言って電話を切った。




前日、面会に行った時、夫は歩いていなかった。


暴力行為を抑えるために薬が強くなったせいだろう。


ぼーっとしていた。


せっかく持っていったお菓子も食べないで、じっと目を閉じていた。


辛うじてコーヒー牛乳を飲んでくれたが、いつもは手を伸ばしてくるお菓子を口にする事はなかった。


お菓子を持ち帰るのは、なんとも悲しい帰り道だった。


そして、朝のM先生からの電話は、ダメ押しに私を絶望へと突き落とすに充分だった。





私の頭の中では、ここから先のシナリオが簡単に出来上がっていた。


誤嚥性肺炎。


点滴によって、肺炎は治るが、口から食べる事が出来なくなる。


「胃ろう、しますか?」当然の様に病院から聞かれる。


「しません。」そう決めているので、その様に答える。


夫の命のともし火は、風前だ。




本で読んでいたまだ先であるはずの出来事が、すぐそこに迫っているのを感じた。


だから、今日の面会は、気が重かった。


私の頭の中では、ベッドに拘束されて、うつろな目をした苦しそうな夫の顔が浮かぶ。


問いかけには反応を示さず、死神に取り付かれた悲壮な夫の姿が浮かぶ。



夏休みで帰っていた三男と一緒だった事が、せめてもの救いだ。


「気が重いわぁ。

でもねぇ、30代、40代で、小さな子供を残して死ぬのと違って、とりあえず62まで生きられたから、良いと思わないとね。

病気になるまでは、やりたいことやって充実した人生だったしね。etc・・・・・・」


私は、息子が運転する車の助手席に座って、夫が死ぬことを前提として話をしていた。


覚悟を決めようと思っていた。


もう、夫にも楽になってもらいたかった。


これ以上、生きていて欲しいと願う理由を見つけられなかった。







病院に到着し、面会票を書きながら、これを書くのも最後かもしれないと思った。


そんな割り切った想いを抱えて、病棟に行った。




夫は、ナースステーションから目が届く病室に・・・いた。


青いつなぎを着て、ベッドの背を少し起こした状態で横になっていた。


左手には点滴の針が刺さっている。


そして、両手とも白いバンドでベッドの柵に縛り付けられていた。


点滴を抜き取らないように。


想像していたのと、同じ状態だ。


「○○さん、奥さんと息子さんが来られましたよ。」


看護師さんが夫に話しかけながら、両手を縛り付けていたバンドをはずしてくれた。




私の想像と大きく違っていたのは、夫の表情だった。


とても穏やかな顔をしている。


楽そうに見える。


そして、自分からいろいろしゃべろうとしている。


たどたどしいながらも、言葉が出てくる。


私の問いかけに、頓珍漢であっても、ちゃんと返事をしてくれる。


メグちゃんって知ってる?


しらない


可愛いんだよ


よかった


おばあちゃん、元気だよ


そう、よかった


お腹すいてる?


すいてるよ


Tはね、今、海に行ってるの


へぇ~、へへへへへ・・・・



笑った!


もう、絶対、一生見られないだろうと決め付けていた夫の笑顔が目の前にある。


奇跡に思えた。


その後も、夫はそのきらめく笑顔を惜しみなく見せてくれた。


あまりに一杯しゃべるので、その言葉を書き記す時間が無かった。


何をしゃべってくれたか残念ながら全部は思い出せないが、息子と顔を見合わせながら、充分に感動したので、それで良い。


静かな、幸せな時間が流れた。


いつまでも、いつまでも、夫の傍に居たかったが、帰らなくてはならない。


明日また、美味しいものを持ってくる約束をして、別れを告げた。






M先生はおられなかったので、看護師さんに、今日の奇跡について聞いてみた。


看護師さんの話は、こうだ。


昨日の朝の発熱は、今日には下がった。

昨日は、酸素の状態も悪かったので、吸入をしたが、今日はそれも必要がなくなった。

水分などの点滴を一日4本している。

口からはまだ食べてはいけないが、明日、またレントゲンを取るので、その結果によって口から食べられるようになる。

抗精神薬は中止している。

とても穏やかになって会話も出来るようになっている。

目の焦点が合うようになった。

元々の○○さんは、こんな感じの人だったのかなと、思った。

今までは、昼間はずっと歩いていたし、夜も身体が動く分、良く休めていなかったのかもしれない。

それが、拘束であっても、休むことが出来る様になったので、身体が楽になったのかもしれない。

肺炎を起こして抗精神薬を中止して、落ち着く人がたまにいるのです。

明日、先生が状況を見られて判断されるでしょう。






薬は、不思議だ。

在宅の時、薬に頼らざるを得ない状態となり、服薬し、その結果食べる事が出来なくなり、いよいよ死を覚悟して、全ての薬を止めた時期があった。

その結果再び食べられるようになり、生き延びることが出来た。

それでも、暫くすると再び、混乱酷く荒れきった状態になり、薬を飲んだ。

飲み続けたけれど、状態は更に酷くなり、とうとう入院した。

医師の目がある病院でも、暴力が復活し、薬が強くなった。

肺炎を起こし、寝かされた結果、薬が中止となった。

そして、夫らしさが戻った。





何が何だかさっぱり分からない。


過去の経験から、今日の夫らしい穏やかな笑顔が、これから先も続くなどと、楽観的にはなれないが、今日、久しぶりに心から幸せだったので、それで良い事にしよう。








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