三男は、年に3回しか帰って来ない。
お正月、ゴールデンウィーク、夏休み、それも来たかと思うとあっと言う間に戻ってしまう。
だから、ゆっくりと話す時間が無い。
父親の事も、今まではあまり話題にした事がなかった。
避けて通れる話ではないけれど、お互いに、何をどう話せばよいのか良く分からなかったのだと思う。
たまに帰ってきた時位、ゆっくりと寛いでもらいたい母心もある。
夫が家にいた頃は、三男が戻って居る間は、どうか大人しくしていて、と、願ったものだった。
「お父さんはどう?」と聞かれれば、「大丈夫、心配しなくていいよ。」と言うだけだった。
だけど、家族として、避けては通れない道がある。
今回、三男は随分ゆっくりと滞在した。
どちらからとも無く、自然に夫、父親の話題になった。
辿ってきた過去の事、今の事、そしてこれから起こりうるであろう未来の事。
色々話した。
三男の考え方も聞けたので、私にとって、とても有意義な時間だった。
昨夜遅く、「何か飲みますか?」と聞くので、「じゃあ、コーヒー飲もうか。」と言うと、彼はブラックコーヒーをいれてくれた。
苦いコーヒーを飲みながら、また、夫、父親、そしてこの病気の話になった。
私は、妻としての苦悩を抱えているが、息子は息子の立場で、苦しみを抱えているのだと分かった。
コーヒーを飲み終わると、「これから帰る事にしたから。」と言う。
随分急だ。
あと一日くらい居ると思ったのに。
「それじゃあ、お元気で。」
別れる時、車の窓からこう言って去って行くのが、今までの彼のスタイルだ。
運転席に座った彼が、窓を開けて何か言っている。
また「お元気で」と言ってくれるのかなと思いながら、私は近づいた。
何?
お父さんの事、よろしくお願いします。
今回の、別れの言葉は、いつもと違っていた。
心配しないで。大丈夫だから。
そう返すのがやっとだった。
こうして、家族それぞれ、それなりの覚悟を決めて行くのだろう。
コメント
コメントの投稿