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いつでも里親募集中

お庭が枯葉で埋まっています。真っ青な空の色と、この時期にしては暖かい陽気に欲を出して、ヒロくんを落ち葉掃きに誘ってみました。 数年前までは、庭掃除はヒロくんの仕事でした。病の進行と共に、だんだんと回数が減って行き、昨年の今頃は、運動不足解消を口実にした私に、尻を叩かれながら、しかめっ面で落ち葉をかき集めていた姿が思い出されます。

ヒロくんが掃いた落ち葉は、右から左へ移動するだけで、せっかく私が綺麗に掃いた場所に、あっと思うと落ち葉が散らかっていたり・・・・「掃除」には程遠いものでしたが、それでも何か体を動かす事をして貰わなければと、「必死」の想いで落ち葉掃きに連れ出していたものでした。


今年は、デイに出かけている日が多いので、私自身の「必死」の想いが少なくなったのでしょうか。
あんなに嫌そうな顔をするなら、別に庭掃除なんかしなくてもいい、放って置けば腐葉土になる事だし・・・

そう決めていたのに、「庭の落ち葉掃きでもしようか。」と誘ってしまったのは、この青空のせいにしておきましょうか。

ヒロくんは「いや。」とは言いません。いつも絶対に言わないのです。今日も、半分笑った顔で「いいよ。」と言いました。

軍手をはめて(はめさせて)長靴を履いて(履かせて)、準備OKです。私は、竹箒と熊手を持ち、ヒロくんに「ネコ、持ってきてね。」と頼みました。

一輪車の事を何故か皆「ネコ」と呼びます。

ヒロくんは、目の前にあるネコを素通りして「どこ?」と探しに行きそうになりました。「ここ、ここ。」と私は、ネコを手で触ってみせました。

久しぶりの庭掃除開始です。

最初、ヒロくんは順調に熊手で落ち葉をかき集めてくれました。順調にと言っても、もちろん普通の「順調」ではなく、しかめっ面が出ていないだけ、と言う意味です。

時々、立ち止まって空を見上げています。視線の先には、黒いとんびが大空を優雅に舞っていました。

私「あ、とんびだ。気持ち良さそうねぇ。ヒロくんも、空飛びたい?」

・・・・・・・・・・・・・・

ヒロくん「そりゃあ、むりだよ。」

なかなか、全うな答えです。

15分位は、快調な落ち葉掃きが続きました。こうして二人で庭掃除をしていると、元気だった頃と一見何も変わらない様な錯覚に陥ります。

庭の直ぐ脇が、売店になっているので、時々お客さんが買い物に入って行くのが見えます。

「こんにちは~。」私達の姿が見えたのか、一人の女性が声を掛けてから、売り場に入って行かれました。

ヒロくん「だれ?」

私「Kさんよ。」

ヒロくん「ああ、そう。」

ヒロくんがお隣の娘さんの顔を忘れてしまった事が判明しました。やや不機嫌になったヒロくんは、落ち葉掃きを止めて、庭の石に腰掛けてしまいました。

「あら社長さん、今日は暖かくて良いですね。」

勤続12年のパートのおばちゃんが、普通に声を掛けて普通に通り過ぎてゆきました。こんな何気ない「普通」の態度にこそ、涙が出そうになります。

ヒロくんの表情から、この辺りが潮時だと分かっていたのですが、部分的に落ち葉がなくなった庭を見ていると、あともう少しと欲が出て、私は不機嫌になりつつあるヒロくんよりも庭掃除続行を選択してしまいました。

一台の車が入ってきました。降りてきたのは、Nさんです。ヒロくんがバリバリの社長だった頃、良く一緒に仕事をしていたNさんが、もし庭にいる私達に気が付いたら、

「社長!久しぶりですね。元気でしたか?」と声を掛けてくる確立99.9%です。

「Nさんだ。」私は、ヒロくんに言ってみました。

「えぬさん?」

「そう、Nさん。知ってる?」

「しってるよ。」

どうやら、Nさんと言う固有名詞には覚えがあるようですが、向こうにいる男性=Nさんと言う式は、ヒロくんの頭の中では成り立っていないようです。

私の頭の中では、色々な想いが行き交いました。

Nさんに会わせて上げれば、ヒロくん喜ぶと思うよ。

Nさんは良い人だけど、病気のことちゃんと言った訳じゃないし、会わせても分からなかったら変な空気になるかも。

ヒロくんは元々社交的で人に会うのが大好きだったじゃない。

でもねぇ・・・・もうまともに会話できないし、きっとおかしいと思われるよ。

それじゃあますますヒロくんの世界を狭めてしまうじゃない。かわいそう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








「あっちの落ち葉掃きに行こうか。」結局、私はヒロくんを庭の奥に連れて行きました。

顔を合わす事無くNさんが帰った後、ますます不機嫌になって、体調さえも悪くなった感じのヒロくんを見て、私は長く庭にいすぎた事をとても後悔して家に入りました。


そうです。私は心から後悔しました。

私が見るべきは「今」のヒロくんでなくてはならないのに、私が見ようとしていたのは「過去」のヒロくんだったのです。

以前のように、二人で一緒に庭掃除をしている、そう言う光景が再び描かれることを期待していただけだったのです。

以前と同じ様に、とか、元気だった頃の様に、とか、過去を忘れられないのは私であり、当のヒロくんは、「今」庭掃除なんかしたくなかったのです。

もしかしたら、ヒロくんにはもう「過去」は必要ないのかもしれません。

「今」やりたいか、やりたくないか、「今」楽しいか、楽しくないか・・・・・・

ヒロくんにとってお隣のKさんも、仕事仲間だったNさんも、過去に接点があった人であり、「今」のヒロくんにはもう必要がない人たちなのかもしれません。

どんどん世界が狭くなってしまう事を恐れて、少しでも過去との繋がりを無くさないように必死であがき、且つ空回りしているのは私だけで、ヒロくんはたった「今」を生きているだけなのかもしれません。

う~ん、ある意味、うらやましい・・・・・

コメント

今に生きる、にとても同感します!

初めまして。
毎回、拝見させて頂いています。
いつも読んでいるだけなのですが、思い切ってコメント欄に記入しました。
私は現在、海外で義母の介護をしています。
義母とは、言葉はほとんど通じず(英語圏では無い為)、
イライラしっぱなしの毎日ですが
たまに私に見せる笑顔を見ると
『あぁ、やっぱり放っておけない。。。』と思います。

momoさんの介護には愛情が溢れていますね。
いつも涙目でウルウルしながら読んでいます。

そしてお仕事をされながらの介護。
本当に頭が下がります。

無理はせずに、体に気を付けて
ヒロくん(私より年上なのに失礼!)と仲良くお過ごし下さい。
遠い国から応援しています。

るなさん

はじめまして。遠いところからのコメントありがとうございます!

日々の生活の中で「もう、言葉が通じない!」とイラついてしまう事があるのですが、日本語をしゃべってくれているだけで感謝しなくてはいけないのかもしれませんね。反省です。

うちの場合、いずれ言葉をなくす日が来るのでしょうが、最後は言葉より心、笑顔があればそれで救われます。と、自信を持って言えるようになりたいです。


愛情が溢れている、と言って下さると、隠れる穴を探してしまいそうです。もっとやさしく、もう少しやさしく、といつも思います。


遠いお国での介護は本当に大変だと思いますが、お体に気をつけて、無理し過ぎないでお過ごしくださいね。
お母様もどうぞお元気で!

私が「記憶」を失う恐怖に振り回され過ぎていました。
よく妻に記憶の確認をして、不安を煽っていました。
妻がアルツハイマー病の診断を受けた最初の頃は、特にそうでした。
私が「思い出」を必要としていただけでした。
妻も常に「現在」に生きることに専念しています。過去や未来から解放されつつあるのかもしれません。人間以外の動物は「現在」しかありません。私たちも論理(記憶)より感性・感情を大切にした生活を心掛けています。
風邪などにはお気をつけ下さい。
ヒロさんによろしく!

全くの素人で申し訳ありませんが、アミロイドβ蛋白質の蓄積を阻害する薬品の開発はもう手の届くところに来ているのではないかと思っています。ただこれらは発症を予防する薬品で、すでに発症した場合に効果があるかどうかは未知数のようですが、予防効果だけでなく、治療効果のある薬品も手を伸ばせば届くぐらいの距離にあるのではないでしょうか。時間との戦いです。「今」に生きるー決して昨日という思い出に生きるのではなく、「今」と「明日」に向って生きてください。

のんた2号さん

私も、以前は良く名前を書かせたり、時計を読ませたりしていました。毎日書き続けていれば、書けなくなる事などある訳がない、と儚い希望を持っていたのかもしれません。

年月の経過と共に、主人の姿は徐々に変わり、私の心も変わりました。

「諦め」とか「絶望」などではなく、残された時間に大切なのは、名前が書ける事でも時計が読める事でもないと思える様になったからです。

穏やかな日々が一日でも長く続くと嬉しいですね。

奥様共々、お体にお気をつけ下さい。

ないちゃんさま

寒さが厳しくなってきましたが、お体の具合は如何ですか?くれぐれもお大事になさってください。

手を伸ばせば届く所に希望があるなら、引きちぎれるまで伸ばしたいですね。

何時の日か、昔は不治の病だったそうな、と笑って話せる時代が来ると嬉しいですね。

ありがとうございます。改めて、「今」と「明日」を見て生きて行こうと思います。

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