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いつでも里親募集中

無理

受付を済ませた所で、婦長さんと会った。


婦長さんは、笑顔で言われた。


「今日は、朝から調子が悪くて、介助しようとすると、バカ!って、言われるんです。」


その笑顔と、しゃべっている内容が一致しなかった。





病棟は二階。


婦長さんは「上で待ってますから」と言われて、ご自分は階段へ、私にはエレベーターを薦められた。


私は、いつも階段を使っているので「私も階段で行きます」と言って、一緒に上がり始めた。


「無理してないですか?」


年上の婦長さんからの、ささやかな思いやりが嬉しかった。



そして、考えた。


無理してないか?


二階まで階段を上がることは、ちっとも無理じゃないけど、私の日々の生活・・・


やっぱり・・・無理してるな、と思う。


色んな面で、無理してる。


とは言え、仕方がない。


無理しないと一日が終わらない。






与えられた予備知識の通り、今日の夫はご機嫌斜めだった。


身体が右に傾いている。


椅子に座らせようとすると、怒った。


何で怒るかなぁ~?


愛妻が、美味しいお菓子を持ってきたのに・・・・


看護士さんに頼んで座らせてもらった。


テーブルの上に置かれた袋に手を伸ばす。


「美味しいもの」が入っている事だけはまだ知っている。


ランちゃんパパのブログで、水分補給が大切、と書いてあったので、コーヒー牛乳と、飲むヨーグルトと野菜ジュースを持参した。


クリーム入りの柔らかいケーキと共に、完食した。


食べている途中、車椅子に座ったおばあちゃんを、別のおばあちゃんが押しながら、直ぐ傍にやって来た。


車椅子に座ったおばあちゃんは、こちらに向かって大きな声で、「せんせい、おねがいします、おねがいします」と叫び続けている。


私か夫が、「せんせい」に見えるのだろうか。


もともとご機嫌斜めの夫が、怒り出さないか心配だった。


看護師さんが気がついて連れて行ってくれた後、別のおばあちゃんが、目の前の椅子に座った。


おとなしい穏やかなおばあちゃんなので、こちらは大丈夫そうだ。


病棟で見かける患者さんの顔ぶれも、随分変わってきた。


入院して5ヶ月。


いつの間にか、古株になってしまった。





食べ終わった後は、することはない。


じっと座っている夫の手を取って、しっかりと握り締めたり、擦ったりしながら、彼の顔を見ているだけだ。


時々視線が会う。


「おかあさんだよ」


夫は頷く。


「お父さんに会いたくて来たの。会えて嬉しい。ありがとうね」


夫はまた頷く。


こんな事の繰り返しだ。


時々、何かしゃべるように口が動くが、残念ながら聞き取れない。


そんな静かな時間を過ごしているうち、夫の顔はだんだん柔らかくなってくる。


このままずっとこうしていたいと思うけど、叶わない。




私には、トンネルの向こう側の生活が待っている。


5時までに帰って、店を閉めて、夕食の買い物をして、食事を作って・・・・


家事は山ほどある。


頭の中は、仕事の段取りが渦巻いている。


そうそう、メグちゃんも待ってるし・・・


早く帰らなくては。




「帰るね」


「また来るからね」


「バイバイ」


何を言っても、頷いてくれる夫を残して、席を立った。




やっぱり、私は・・・・


無理してる、と思う。













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