昼過ぎ、M先生から電話がかかってきた。
「あまり、良い話ではないのですが・・・」
先生の前置きは、何時も同じだ。
良い話が振ってくる訳が無いことは、重々承知しているが、それでも、その前置きは、私の心を落ち込ませるに充分だ。
「落ち込む」と言うより「構える」と言った方が、より正確かもしれない。
今度は、何?
そんな感じで、先生の次の言葉を待った。
「他の患者さんを押してしまい、その方は、コブが出来てしまいました。
骨折などと言う事になったら大変なので、拘束します。」
拘束・・・・・・・またか。
私は聞いた。
「拘束って、どんな風にですか?」
先生は答えた。
「車椅子に座ってもらい、胴と両手を固定します」
午後、面会に行った。
夫は、先生が言われたとおりに、車椅子に座っていた。
おそらく、午前中は、大騒ぎだったのだろう。
「今日は、午前中、ちょっと頑張りすぎちゃって、車椅子になってしまったのよね。でも、午後からは落ち着いて来たし、今が一番良いわ。
オムツ交換の時間だけど、後でやりますから、美味しいもの食べてね」
優しい看護師さんがそう言った。
車椅子に座っている夫は、落ち着いた顔をしていた。
2度目の肺炎から回復して、再び病棟を歩き出した時に、トラブルが起きたらしい。
自由に動き回れない状態の時の方が、落ち着いている。
そう感じる。
動ける時は、歩いても歩いても、自分の居場所が見つからない。
熱が出てベッドに寝ている時、逆に居場所が出来て落ち着くのだろうか?
分からない。
今日は、回り道をしてローソンに寄って来た。
夫が、大好きだった「モンブラン」を買う為だ。
この時期だけの限定商品で、とても美味しい。
夫は、とても美味しそうにモンブランを食べた。
「モンブラン」と言う単語は、きっと脳の何処かに残っているのだろう。
食べ終えた夫は、とてもとても大人しく座っている。
午前中の一波乱が、信じられない思いだ。
私が帰った後、夫はまた誰かを突き飛ばしたりしないように、両手を縛られるのだろうか。
このままじっと手を握り続けていたいと思った。
でも、それは叶わない。
一時間ほどいて、車に戻った。
待ちくたびれたメグちゃんが、大喜びして迎えてくれる。
癒される。
帰り道、おじさんが、大きな黒い犬を連れて歩いていた。
と、思ったら・・・・
それは、黒い、ブタ・・・だった。
これも、笑えた。
なので、今日のタイトルは、「ブタ」にしよう。
コメント
コメントの投稿