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いつでも里親募集中

最悪

シェラトンホテルの美味なモンブランが、一つだけ残っていたので、夫に食べさせてあげようと思った。





昨日も行ったけど、今日もまた行こう。


いつものジュースを買うために、途中でコンビニに入ったら、店員の若いお兄さんが、サンタさんの格好をしていた。


ちょっと早い気がするけど、その内、世間にはクリスマスがやって来るのだと気が付いた。


その次には、お正月がやって来て、春が来て夏が来て、また秋が来る。






病棟に入ると、いつもとは違う所に居る夫が目に入った。


場所は違っていても、車椅子で拘束されている事には変わりがない。


看護師さんが体温計を持っている。


馴染みの男性看護師さんがやって来た。


「先程から7度2分ほどの微熱があります。そのせいか、ご本人は、ちょっと元気がありません。この後、少し休んで頂こうと思います。」


「お八つ、食べさせても大丈夫でしょうか?」


せっかく持って来たモンブランは、是非食べてほしかった。


「軟らかいものなら、大丈夫です。」


良かった。


「これ、外しますね。」


看護師さんは、夫の両手を縛りつけているベルトを外してくれた。


両手をフリーにすると、近くに来た人を掴んだり、押したりするから危ないらしい。


その時の私は、大人しく車椅子に拘束されている夫の両手までも、何故縛り付けておかなくてはならないのか、少々疑問だった。


ただ、この疑問は、その後、すぐに解決する事になるのだが・・・・







面会コーナーは、日曜日のせいか、沢山の家族で埋まっていた。


空いたテーブルに座って、いつも通り、ささやかなティータイムを始めた。


夫は、微熱がある為か、顔が紅い。


でも、何時も通りモンブランを食べてくれた。


コーヒー牛乳を飲んでくれた。


昨日と今日は、何も変わらないはずだった。






が・・・・・





半分ほど食べた時に、夫は、豹変した。




後から落ち着いて考えると、熱があって体がしんどい時に、いつもと同じ調子でおやつを口に運ぶおばさんの配慮の無さに、切れたのかもしれない。





「○▼■●▽※☆・・・・・・・・」



彼は、言葉にならない言葉を口にして、怒った。


在宅の時には慣れていたのに、久しぶりに目のあたりにする夫の「怒り」に驚いた。


しかもその「怒り」は私に向けられている。




「○▼■●▽※☆・・・・・・・・」



夫は、何回も喚き、そして、手を挙げた。


背が高く手が長い彼のパンチは、もし相手がお年よりなら、大事になるだろう。


私は、両手を車椅子に拘束する訳が、漸く理解出来た。


日曜日の長閑な面会コーナーが凍りついた。


皆が、振り返ってこっちを見ている。






何回目かに、看護師さんが気が付いて、飛んできた。


「どうしたんですか?」


どうしたかと聞かれても、答える事が出来なかった。


その時の私は、いつもと同じ事しかしていなかったから。


「急に怒り出したのですか?何かがあったのですか?」


聞かれても、分からなかった。


「分かりません。ここまで食べて、そしたら急に・・・・」


私は、半分に減ったモンブランを看護師さんに見せて、その後、ただ、ただ、涙が出てきた。


看護師さんは、残りのモンブランを見て、


「それじゃあ、こうしますから、残りを食べさせてあげてください。」


と言って、夫の手を車椅子に縛りつけようとした。








「いえ、もう帰ります。」


私は、これ以上、食べさせる気にはなれなかった。





あふれ出す涙を止める事が出来ないまま、席を立った。


「ご主人も、悲しいんだわ。ほら、涙が出てる。」


看護師さんに言われるより前に、夫の目からも涙が流れているのを、私は気がついていた。






いつもより、ずっと早く車に戻ったので、メグちゃんは喜んでくれたかもしれない。


「メグちゃん、お父さんが怒ったの。」


そう報告してから車を走らせた。




家に着くまで、ずっとずっと涙が止まらなかった。














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