今日は、私の誕生日だ。
夫と二人だけで、誕生パーティをしようと決めていた。
茶色のシャツを着た夫は、ナースステーションの前のソファに座っていた。
車椅子に座っている訳でもなく、両手を拘束されている訳でもない。
つなぎも着ていない。
最悪の波は過ぎ去ったのだろうか。
調子が良い時、あまり喜んではいけない、と無意識のブレーキが掛かる。
ちょっと良い波が来ているだけだと、自分に言い聞かせる。
夫は、穏やかな顔をしていた。
燦燦と陽射しが差し込む面会コーナーに連れて行きたくて、看護師さんと一緒に立ち上がらせようとしたけれど、夫はそれを嫌がった。
せっかくの穏やかな顔に皺が寄ったので、そのままそこでパーティをする事にした。
周りのおじいちゃん、おばあちゃんから一杯話しかけられる、ちょっと賑やかな場所だけど。
持って来たのは、ティラミスとカフェラテとぶどうジュースだ。
夫は、美味しそうに食べてくれた。
「今日はね、お母さんのお誕生日だよ。」
「おめでとう、って言って。」
私は、何度も言ってみた。
夫は、分かってか分からずか、「うん」と言う。
食べ終わった夫に、お気に入りのCDを聞かせるために、イヤホンをつけた。
じっと穏やかな表情で聞いている。
平和だ。
CDでは、加山雄三が「幸せだなぁ・・・・・」って、言ってる頃だ。
なんか、私も、幸せだなぁ・・・・・
周りでは、いつもの、それなりの騒々しさが響いているが、私は、夫と二人で「幸せだなぁ」の世界に入っていた。
この病院の、この病棟の、このソファの一角で、夫と二人っきりで開いた、誰も知らない私の誕生パーティ。
どんな状況でも、幸せを感じることが出来れば、それが「幸せ」なんだ。
帰り際、夫は自分で立ち上がって、しっかりとした足取りで歩いてお見送りしてくれた。
きっと、今の夫が出来る、最高のプレゼントだったのだろう。
しかしこのブログを読ませて頂いて、誕生日は、私の一番大切で、一番好きな母と過ごすのが正解だと、はっと気づきました。
母はケーキを食べるのが好きで、ご飯は食事介助が必要なのに、ケーキは自分でしっかり食べます
大事なものってすぐそばにあるんですね。
MOMOさん、気づかせてくれてありがとう。。