「これ、今までの写真です。」と、スタッフさんから封筒を渡された。
中には、夫が入院してからの、色んな写真が入っていた。
麦藁帽子を被って、明るい日差しの中で看護師さんと腕を組んで写っている写真。
とても良い笑顔が出たという、
お誕生会の時の写真。
私も目の当たりにした
秋空の奇跡。
その他にも、日常の一こまだろうか、ご飯を食べさせてもらっているところや、ソファに座っている写真などが入っている。
封筒をもらったときは、素直に嬉しかった。
忙しい中のスタッフさんの配慮に感謝一杯だ。
でも・・・・・
何れの写真も、あまり良い顔じゃない。
笑顔の瞬間を写すという奇跡のタイミングは、無理としても、
サンタさんの赤い帽子を被った夫の顔は、二度と見たくないような情けない表情をしている。
後ろでピースをしている看護師さんの笑顔と、夫のしかめっ面は、同じ空間を共有している様には見えない。
あ~あ、結婚した時は、石坂浩二似の良い男だったのに、こんな顔になっちゃって・・・
実物よりも、あらためて見る写真から受けたショックの方が大きかった。
そう言えば、家に居た頃は、いっぱい夫の写真を撮っていたけれど、入院以来一枚も写していないことに気が付いた。
写してみよう。
そう思って、先日の雪の日にカメラを持って面会に行って来た。

いつも、この窓際で、外を眺めながらティータイムをする。
隣の病棟の屋根が切れる辺りに、林立した木々が見える。
せめて、私が居る時間だけでも、夫の目に、雪を抱いた遠くの風景が見えていると嬉しい。
雪を眺めながら、思い出話をした。
子供たちを連れて、毎年スキーに行ったね。
お父さんが、いっぱい遊びに連れて行ってくれたから、本当に楽しかったね。そして、パチリと一枚。

ちゃんと、夫らしい良い顔をしているじゃないか。
スタッフさんには内緒だけど、私の方が名カメラマンだわ・・・・

誰よりも愛情深く接してらっしゃるんだから。
旦那様だけが朧げながらもそれに応えて下さるんだから。