鳴り響くサイレン、救急車が来た。 私が、救急車の乗るのは、これで4回目だ。
全て、付き添い。
前の3回は、子供たちが小さかった頃の怪我だった。
骨折が2回、やけどが1回。
男4人を育てるのは、並みじゃなかったな・・・
救急車を間近で見ると、つい、そんな事が思い起こされる。
それはさて置き、ブルーの服にヘルメットを被った若い救急隊員さんが3人入ってきた。
平穏(でも無いけど)な日常が、急遽、非日常の風景に変わった。
Sさんは、おおごとじゃない、って言ったけど、やっぱり、私にとっては、おおごと、だった。
生年月日や年齢、既往症など、色々聞かれて答えた様な気がする。
救急車の中に運び入れるまでは、順調だった。
私は、メグちゃんをぎゅっと抱きしめて、「ゴメンネ、待っててね。」と言ってから、ストレッチャーを追いかけた。

久しぶりに乗る救急車の中は、相変らず狭い。
夫は、いつもと変わらず怒ったりもする。
ほら、こんなに元気なのに・・・と思う。
私は、夫の横に座り、手を握り締めて、ご機嫌をとる。
大丈夫、大丈夫、直ぐに行くからね。じっと寝てれば大丈夫だよ・・・ところが、救急車は中々動き出さない。
受け入れ先が決まらないと出られないのだ。
近くの日赤・・・・・ダメ。
個人病院・・・・ダメ。
駅の近くの大きな総合病院・・・・・ダメ。
私は、待っている間、これ、TVで見たことがある、と思った。
受け入れ先が見つからなくて、せっかく救急車に乗ったのに出発できないこの状況。
もっともっと緊急を実感している場合、付き添いの家族の思いはいかばかりだろうかと思う。
私は、このまま受け入れ先が見つからないで、もう一度家に戻れないかと期待した。
そして、隊員さんに聞いてみた。
中々難しいんですね。このまま一晩家で過したらダメでしょうか?隊員さんは言った。
「いえ、この状況ではそれは無理ですね。」
そうなんだ・・・・
漸く、4件目で受け入れのOKが出た。
それは、大学病院の救命救急センターだった。
とにかく、救急車が動き出したのでほっとした。
夫は相変らず時々怒って、手を振りかざす。
私は、救急車に備え付けの機材などを壊しはしないかと、そんな事が気になっていた。
サイレンを鳴らして走る救急車の中から眺める景色は、同じ道でもいつもと違って見える。
周りの車が、皆、避けてくれる。
赤信号でも進入可。
何だか、気分が良い。
夫の状況を理解していない私は、そんなお気楽な気分で救急車に乗っていたのだ。
瞬く間に、救急車は大学病院の救急入り口に到着した。
何て大きな病院だろう。
出迎えるように、お医者さんが何人も待っている。
夫を乗せたストレッチャーは、吸い込まれるように建物の中に入って行った。
そこから、長い夜が始まった。
続く・・・・・
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