ただいま・・・・帰って来ちまったよ。
そんな思いで、K2病院の玄関を入った。
道中の夫は、やや落ち着かず、手袋をはめられた手を動かすので、管が抜けないように、私は夫の手をしっかりと握り締めていなくてはならなかった。
入院受付を済ませ、暫く待っていると呼び出しが掛かった。
また・・・飄々としたM先生の顔を拝むこととなった。
先生は、直ぐに私たちを病棟へ連れて行ってくれた。
大きなガラスの、なつかしの扉。
あ~あ・・・・帰って来ちまった・・・・
誰も、「お帰りなさい」とも「お久しぶり」とも言わないけど、見覚えのある顔が一杯だ。
あ~あ・・・・ほんとに、帰って来ちまった・・・
夫は、直ぐに個室のベッドに寝かされた。
声を出したり、暴れたりはしない。
落ち着いたのを見計らって、私と息子は面談室へ行った。
今回は、M先生ではなく、内科のA先生が主な発言者だった。
今の夫に関して言えば、精神科としての治療は何も無く、肺炎の治療が最優先だったからだ。
A先生は言った。
ここは精神科の病院なので、内科的には救命センターの様な治療は出来ません。この病棟の内科医は、私一人で、日勤だけです。
看護師も、精神科の看護師で、内科の看護師は居ません。また、職員の数的にも救命センターとは違います。
例えば、痰の吸引など、出来るだけ気をつけてして行きますが、24時間誰かがずっと傍についていると言う事は出来ません。
たまたま誰も居ない時に、痰を詰まらせてしまう、と言う危険性もあります。
万一の事があった時に、出来る限りの事をして欲しいと言われる場合は、その時にもう一度救命センターに戻って頂きます。
ただ、そうではなく、ここで出来る限りの事をして、後は見守る、そう言う事で宜しければそうします。
出た!「見守る」だ。
私は、もうそれで良いと思った。
はい、それで結構です。夫は、もう10年もこの病気で苦しんで来ました。人生の最後に、機械につながれて生きながらえるのは、夫の望むことではありませんし、私もそれは望みません。
何かがあったとしても、それはもう夫の運命だと思います。出来るだけ自然に逝かせてあげるのが、今の私が夫に出来る事、それしかないです。
ただ・・・・病院で、気がついたら死んでいた、ではちょっと悲しいので、出来るだけもう一度家に連れて帰って、私が看取ってあげたいと思ってます。
全く、昨日から、私は何をしゃべっているんだろうと思う。
もう、夫が死ぬことを前提として、自分の思いを述べている。
でも、考えてみたら、夫が死ぬ、いや、人が死ぬのは、当たり前のことではないか。
全ての人が、絶対、100%、死ぬことを避けられない。
今回の、夫の肺炎騒動が、どう転んで行くかはまだはっきりしない。
どちらへ向かうとしても、ここ数日の慌しい出来事を体験したことで、私は、一つ、壁の向こうを見た気がしている。
しっかりしよう。
残された時間がどの位あるのかは分からない。
夫らしい最期を迎えさせてあげるのは、私しか居ない。
ほんの3日ほどの出来事を長々と書いてしまった。
夫の今回の急変の原因は、おそらくベッドに寝たままの夫に、欲するままに食べさせたことで起きた誤嚥性肺炎に違いない。
でも、私は何も後悔していない。
家に帰って、好きな食べ物を沢山食べさせてあげられた事は、夫にとっても、私にとっても、何よりの幸せだったと思うことが出来る。
ここまで、長々とお読み頂いて、ありがとうございました。
「急変」のタイトルで記事を書くのは、これで一段落としますが、K2病院へ移ってからの夫の状態は、決して「急変」から逃れられた訳ではありません。
肺炎は小康状態ではありますが、夫の命の時間が見えてきました。
ここから先、私は何を成すべきか・・・・
自問する日々です。
コメント
管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
コメントの投稿