夫が退院して、一週間が経った。
何か、変だぞ。
今回の帰宅の目的は・・・看取りだったはず。
重症の肺炎を起こし、もう長くないと言われて、連れて帰るなら早いほうが良いとも言われて・・・・
気持ち的には、清水の舞台から、10回は飛び降りて、漸く実現させた看取りの為の帰宅。
もしかしたら一週間か、二週間か、徐々に衰弱して、長くても一ヶ月だろうと踏んでいた。
秋風が吹く頃には、何もかもが一段落して、気持ちを新たに、今年の冬に臨もう。
よし、これで思いっきり仕事に専念できる。
年明けには90を迎える母にも、漸く親孝行が出来る。
私の、頭の中は、そんな次の人生すら浮かんでいたのだ。
ところが・・・・
何か、変だぞ。
どうも、肺炎は治ったらしい。
そして、何か・・・・凄い食欲・・・なんだけど・・・・
おそるおそる食べさせたゼリーに始まり、プリン、ヨーグルト、おかゆetc.・・・・・
ツバメの赤ちゃんみたいに、口を尖がらせて要求する。
卵も食べた、調子に乗っておかゆに混ぜてみた肉団子も食べた。
デザートのスイカも、お八つのティラミスも、何でも、何でも、食べてくれる。
カチカチと歯を鳴らせて咀嚼の意欲は満点だ。
そして、ゴックン。
ねぇ、お父さん、
止めたんですか?
天国へ行くの止めたんですか?
もうちょっと、
いえ、もっともっと、ここに居ることに決めたんですか?
返事は無い。
夫の寿命は、誰にも決められない、誰にも分からない。
夫自身の選択と、神様に任せよう。
私は、日々を淡々と普通に過すだけ。
普通に買い物に行って、普通に夫の好きな物を買う。
普通に料理して、普通に食べさせる。
本当は、心の中は「普通」ではなく、至上の喜びで満たされているのだけど、
「普通」を装うのは、夫の状態が、明日にもまたまた急変する可能性がある事を忘れていないからだ。
その時にまた、天国から地獄へ転落したくないので、私はいつも地上に居ようと思う。
PCを夫のベッドの脇のテーブルに持ってきてブログを書いている。
一日中流れている懐かしいメロディが、耳に心地よく響く。
穏やかな表情の夫がちらちらと視野に入る。
こうして、いつもいつも一緒に居られる。
手を伸ばせば、温かい身体がそこにある。
足元には、メグちゃん。
この地上、
やっぱり、
天国だ。
コメント
管理人のみ閲覧できます
コメントの投稿