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いつでも里親募集中

やはり、あの日の出来事を書き記さなくてはならない。 7月23日、月曜日。










前日の日曜日、夫は、朝と夜の2回もをした。


まだ、慣れたとは言えない、オムツ替えをしながらも、いつの間にか、そのかぐわしい仕事が、ちっとも嫌だと思っていない自分に気がついて、内心気分が良かった。


まだまだ初期の頃、自分には絶対に出来ないと思っていた。


赤ちゃんじゃあるまいし、のお世話なんて、やりたくないと思った。


そんなもの、触れる訳がないじゃないか。


そして、数年前、初めてそう言う事態に遭遇た時、激しくうろたえて、絶望したものだった。


初めてのオムツ姿を目撃した時は、大きなショックを受けた事が思い出される。


年月の経過とは、ありがたいものだ。


そんな過去の自分を振り返ると、よくぞここまで成長したぞ、と、自分で自分を誉めてあげたい気分でもある。


そんな事もあって、日曜日は、気分が良かった。


そして、夜も良く眠ってくれた。


だから、この週も、とりあえずは、いつもと変わらないで過ぎてゆくはずだった。







月曜日の朝、Sさんから電話が入った。


今朝来て見たら、あら?と言う感じで・・・


Sさんは、土曜日に夫が入院していると思っていたのだ。


すみません。もうちょっとやってみようと思います。


すみません、と謝る必要は無いのだけど。


大丈夫ですか?明日、師長の訪問看護の日ですけど、一日早めて、今日の午後、私と二人で伺って、お気持ちをじっくり聞かせて頂きたいんですが、宜しいでしょうか?


はい、どうぞ。


私は、師長さんやSさんと話をするのが好きだ。


過酷な現状を分かってもらえる、数少ない人たちだからだ。


電話を切った後、仕事をしていると、次男が言った。


病院から電話があったでしょう。


うん。午後から、Sさんと師長さんが来るって。


僕の携帯にも、3回も電話がかかってきた。お母さんは、もう、きょう・・何とかって言う状態になっていて、周りが見えなくなってるって。

お父さんを入院させないといけないから、同席して説得してくれって言われた。






何だって???!!!!!





きょう・・なんとか、と聞いて、直ぐに「共依存」が思い浮かんだ。


な、バカな!


Sさんは、一体何を言ってるんだろう?


私は、冷静だ。


ちゃんと周りも見えているし、状況判断は出来る。


全く・・・バカなこと言わないでよ。


と、思ったけれど、息子のその言葉を聞いて、急に不安になった。


様子を見に来てくれて、いつもの様に私の話を聞いてくれると思っていたのに、今回の目的は、夫を入院させるための説得なんだ。


な、バカな・・・・


まだ、もう少し家で頑張れると思ったばかりだったのに、な、バカな!


信じられない!


私が「共依存」だって?


な、バカな・・・・・






午後、Sさんたちが来るのを待つ間に、私は出来るだけ家の中を片付けた。


介護に疲れて、散らかり放題になっていると思われては困るからだ。


全ての介護サービスは、一旦入院を決めた木曜日に断ったので、4日間は、私一人で夫の面倒を見たことになる。


夫は、調子が悪くなかった日曜日に、散髪もした。


新しく買ったバリカンを使って、初めての自家製床屋さんだったので、とら刈りになったところもあるけど、そんな事をするゆとりもあると見せたかった。


髭も剃れたし、服も着替えられた。


ちゃんと私一人でもやってますと、見せたかった。





午後1時過ぎ、Sさんと師長さんが来た。


息子が、余計な予備知識を授けてくれていた為に、私は何となく初めから構えてしまった。


話し合いは、3時間近くにも及んだ。


私が、自分の気持ちを伝えれば伝えるほど、逆に追い込まれていった。


一体、どこでどんな風に歯車が食い違ってきたのだろう。


せっかく、もう少し夫と共に家で過そうと言う思いになっていたのに。


過去の自分と比べて、今の自分は、随分成長したと感じられていたのに。


夫に対する思いも、以前は私は被害者だと感じていたが、そんな気持ちも今はない。


いつまで経っても、苦しみから抜け出すことが出来ない夫が、可哀想でならない。


私が出来ることは、傍に居ること、


ただ、それをしたいだけなのに。


何故、分かってもらえないのだろうか?



確かに、私は疲れている。


それも自覚している。


夫の状態が、このままだとすると、そう長くは続けられないだろうと思っている。


99.9%まで来たら、SOSを発信するつもりだ。


今までも、いつもそうして来た。


だから、今回も出来る。


でも私が、「出来る」と言えば言うほど、追い込まれていった。





私は、目の下に隈が出来ていて、疲れきった顔をして居るらしい。


だから・・・・?


このままにしておくと、私が倒れたり、または世間を騒がす様な事件を起こす可能性があるから、その予防のために入院を勧めているらしい。


な、バカな!


本気で、そう思われているのだろうか?



momoさんを信用していないと言う訳ではないのですよ。

ただ、私も長年この仕事をしてきて、何千人と言うご家族を見てきました。

在宅を続けて行くには、もっといい加減でないとダメなのです。週に6日ほど、デイに預けても平気で居られるようでないと出来ないのですよ。

ヘルパーさんも来ない状態で、momoさんが一人で24時間、ずっと見て行くと言うのは、絶対に無理なのです。

最低限、H先生の往診はつけないといけません。

そして、お仕事に行かれる間は、必ずヘルパーさんを入れて、何もすることが無くても、居てもらわなくてはいけません。

これだけ、動きが活発になっているから、車椅子に座らせておいても、何が起こるか分からないでしょう。

万一、それで何かが起こった時、世間は、どうして、こう言う状態の人を一人で置いておいたんですか、と言う事になって、場合によっては、事件になるのです。

せっかくここまで10年間も、一緒にやってこられたのに、最後にそんな事には、絶対になって欲しくないのです。





ちょっと、待ったぁ~。


話しが飛躍し過ぎだ。


確かに、この数日は、私が一人で何もかもをやっている。


ただ、それは、たまたま入院を決めたから、各種サービスを断っただけであって、今後は必要に応じて再会してゆくつもりだった。


H先生の往診だけは、入れなくてはならないのは分かっていた。


ただ、ヘルパーさんは、もう少し様子を見てからにしようと思っていた。


退院当時、目一杯のサービスを組み込んでもらったのは、私が夫の世話が出来るかどうか心配だったからだ。


寝たままの状態でオムツを替えられるかどうか自信が無かった。


他にも、一人では不安なので、助けてもらいたいと思っていた。


でも、実際に始まってみると、意外に一人でも大丈夫だと言う事が分かった。


下手だけど、オムツ替えも出来る。


着替えや、髭剃りや、身体の清拭などは、ご機嫌を見計らってすれば良い。


時間で動かなくてはならないヘルパーさんにお願いしていると、夫のご機嫌に合わせることが出来ない。


漸く落ち着いた時に、ヘルパーさんが来て、また不穏になってしまうこともあった。


だから、暫くは夫の調子に合わせて、私がやろうと思っていただけである。


この現状を、病院側は、「全てのサービスを断って、一人で背負い込もうとしている異常な状態」と判断したのだろうか。




冤罪だ、冤罪だ!



病院側の言いたい事を纏めるとこうなると思う。


「患者Aは、重度の認知症で、薬の調整も難しく、残念ながら、今のところ治療の手立てが無い。

妻は、夫に対する思い入れが非常に深い人く、病状的には、在宅は困難であるが、強い希望で家に連れて帰った。

2度目の退院は、看取りの予定であったけれど、本人の生命力と、妻の献身的な介護で奇跡的に回復した。

但し、再び酷い不穏状態が復活して、とても在宅では見られる状態ではないにも関わらず、妻はその状況を理解していない。

また、精神状態が不安定で、師長の訪問看護の時にも、夫には早く楽になってもらいたい、などと言う発言があった。

先週、ソーシャルワーカーの勧めで、一旦は入院を承諾したにも関わらず、前日に断るなど、考え方も一貫していない。

現在は、往診医やヘルパーも入っておらず、24時間妻が一人で介護している。

また、動きが激しくなってきたにも関わらず、夫を車椅子に放置したまま仕事にも出かけている。

妻は、疲れ果てているのを自覚できずに、まだ自分で看ると言って聞く耳を持たない。

この状態は、明らかに、周りが見えないで「共依存」に陥っていると判断出来るので、ソーシャルワーカーと看護師長を派遣して、早急に入院を納得させる必要がある。

一日遅れれば、その間に、悲劇が起きる可能性を否定できないので、本日、連れて帰るべし。」




Sさんと師長さんが、こんな指令を受けたのかどうかは分からないけれど、言いたい事は、大体そう言う事で間違いないと思う。




何故、急にこんな展開になったのか?


退院後、訪問看護として、師長さんが週に一回来てくださっていた。


この一年、夫の状態を間近で見てもらい、また、長年、精神科病棟の看護師さんとしての経験も豊富なので、何でも相談できる。


若年性認知症の過酷な現状を話して、理解してくれる人は、そう多くは無い。


年齢も、夫と同じ位なので、私から見ればお姉さん的存在だ。


そんな事もあってか、師長さんの訪問は、私にとってはとても心強いものであったので、あまりに赤裸々に自分の思いを語りすぎたのかもしれない。


夫が家に居てくれることが、私にとってどれだけ大きな幸せであるかも話したが、同時に、抱えている苦しみ、悩み、絶望も話した。


だから、師長さんは、私の心の中が透き通る様に見えたのかもしれない。









Sさんと師長さんと話していて、だんだんと分からなくなってきた。



共依存?


事件?


まさか・・・・・


そんな事したら、何もかもお終いだと、ちゃんと分かってる。


あまりにも理不尽なので、同席していた息子たちに聞いてみた。


お母さんが、お父さんの首を絞める事があると、思う?


いや、それはないけど。


そうだろ、そうだろ、やっぱり、息子は分かってる。


ただ、もうこうなってて(息子は、両手のひらを目の脇に持って行って、周りを遮断した)人の言うことを聞かなくなっている。


と、次男が言った。




私は、いつも私のやり方でやって来た。


だけど、ちゃんと回りは見えている。


と、思っている。


介護は、自分の生活の一部だと思って来た。


ただ、今は、その一部が大きくなりすぎて、ほかの事を隅に追いやっていることは分かっている。


でもそれは、夫の状態を考えれば、仕方がない事だと思う。


確かに、夫に対して、のめり込んでいるとは思うけど、仕事を疎かにしている訳ではなく、社会とのかかわりも維持できている。


家の事だって、最低限だけどやってるじゃないか。


介護だけにのめりこんで周りが見えなくなっているとは、とても思えない。







Sさんは言った。


もう無理だなと思って、momoさんから私に電話して下さるなら、それで良いんですよ。


しますよ。するに決まってるじゃないですか。

確かに、今のこの状態が、ずっと続けられるとは思ってません。だから、限界の直前で、電話するつもりですよ。



本当に?


本当ですよ。どうして信じてくれないんですか?


今の状態が長く続けられないと思っているんだったら、とりあえず入院しましょうよ。落ち着いたら、また戻ってくれば良いのですから。

病院は、決して姥捨て山ではありません。状態が良くなれば、退院出来ます。



その内、入院しなくてはならないとは思っていました。ただ、自分で決めたいんです。


(あれ?おかしいぞ。岐路に立った時、誰か決めてくれる人がいたら良いのにと、思ってたんじゃないのか?)



余力がある内の方が良いのですよ。


余力を残すのは・・・嫌だ・・


(ん?これじゃ、駄々っ子じゃないか。)




しゃべればしゃべるほど、自分の首が絞まって行く。



冤罪だ!冤罪だ!


今まで私は、いつもいつも自分の限界までやって来たと言う自負がある。


だから、一旦、決断したことへの後悔はなかった。


出来る限りやった、自分にはこれが限界だった、と思えたからだ。


ただ、今はどうなんだろう?


私は、まだ出来ると思っている。


まだ、99.9%までは来ていない、と思っている。


それなのに、自分の決断ではなく、周りから説得されて、夫を手放すのか?


初めて、そうするのか?






話し合いは埒があかない。


どうしても入院させる気でいるのが、Sさんと師長さん。


まだ、大丈夫、入院の時期は自分で判断したい、と譲らない私。


Sさん側は、既にしっかりと次男を味方につけている。


元々、夫を家に連れて帰る事に反対していた次男は、Sさんの誘惑に簡単に落ちてしまったのだろう。


「あなたのお母さんは、もう病気なのよ。お父さんの介護に疲れて、状況が見えなくなってるの。正しい判断など、とても出来ないわ。

このままでは危険だから、今日、私たちが、連れて帰ってあげるから、協力してね。お母さんが倒れても困るでしょう。」


こんな風な事を、事前に聞かされていたのだろうか?


普段は、決しておしゃべりではないくせに、次男は、余計なことばかりしゃべる。


もう、何年も前から、(母は)言う事がころころ変わるし、入院を急にキャンセルしたのも、今までにも何回もありました。


(事実だけどね。)


最近は、頭が痛いって言って、毎日バファリンを飲んでも、ちっとも治らないって言ってます。


(確かに、それも事実だけど。)



すかさず師長さん、


そうですか、そう言う事は良くあるんですか?


それは、この間、急に暑くなった日だけです!今は、ないです!元気です!


から元気じゃないですか?


から元気だって、いいじゃないですか!




あ~、このままでは私は、本当に病人にされてしまう。


冤罪だ、冤罪だ!


私は、黙っている長男に話を振った。


B型の次男は、考え方が極端な所があり、こうだと思うと、決め付ける癖があるのに対して、私と同じA型の長男は、もう少し、視野が広い。


私の気持ちをより理解してくれるのは、いつも長男だと感じていた。


前回の看取り退院の時も、正面から反対した次男に対して、長男は、「お母さんがやりたいようにすれば良いと思う。」と言ってくれた。


これまでの、皆のやり取りをじっと聞いていた長男は、こう言った。


この状況では、どちら(母か弟か)の味方もする事ができないですね。


(なんだよぉ~、その優等生的な答えは)


ただ、もう少し、大丈夫だと思うんだけど。


ほらね、そう思うでしょう。大丈夫なんですよ。


私は、敵陣で味方に出会った様な気分だった。





とは言え、これは多数決で決める様な問題でもない。


「全員合意」これが基本だ。


まるで死刑裁判における最終判断みたいじゃないか・・・・・





Sさんは奥の手を出してきた。



今の病棟は、他の患者さんが大きな声を出したりして、騒々しい環境です。それでね、一つ提案があるのですが、こんど新棟が完成したのです。

8月から入れるのですが、一番上の5階に、多目的ルーム、と言うのがあります。

そこは認知症の方だけではないのですが、個室になっていて、窓から山が見渡せるとても眺めが良い所です。

個室なので、音楽もイヤホンでなくても聴けるし、奥様が面会に来られても、ゆっくりと過していただくことが出来ます。

今の病棟よりもずっと環境は良いですよ。ご希望されるなら、入れるように手配します。




昨年工事が始まった新しい病棟が、いよいよ完成するらしい。


真新しいお部屋で、周りの山々が眺められる静かな個室。


若干、心が動かないでもないが、じゃあ良いですよ、と言う次元の話ではない。


入院させて、休んで下さいと言われますが、私は主人がここに居た方が楽なんですよ。今は、夜も熟睡できてますから。

面会に通うのは、結局午後からは、それでつぶれてしまて、仕事は午前中しかできないし。



師長さんが口を挿む。


まあそうかもしれませんね。自分のご主人なのに、遠慮しながら会いに来ないといけないでしょ。

病院に連慮し、看護師さん達に遠慮して、面会しなくてはいけないですものね。ここにいれば、いつでも会えますからね。



(分かってるじゃん)


私は、夫が家に居る方が、楽が出来る、と思っている。


とは言え、今のこの不穏続きの状況では、あまりにも大変だ。


理屈ではなく、夫の叫び声が、私の神経を少しづつ少しづつ、そぎ落としているのが分かる。


何とか、大人しくなってくれないだろうか。


せめて、声だけでも出さないでくれないだろうか。




いくら話しても結論は出ない。


次男が聞いた。


今日、入院出来るんですか?


まさか、今日出来る訳ないでしょ、と思ったら、Sさんが言った。


出来ますよ。


え?今日、これからですか?


ええ、介護タクシーを呼びましょう。



ここで、私は不思議な感覚を覚えた。


意固地になって抵抗していたのに、今、このまま夫を連れて行ってもらえるなら、楽になる。


そう感じる、もう一人の自分が居た。


入院させるなら、一緒に行くよ。今夜から一週間出張で帰って来れないけど、今日なら一緒に行けるから。


次男が更に誘惑の言葉をかけて来る。


ほら、一緒に行ってくれるって。


Sさんは、まるで幼子に言い聞かせている様な口調だ。






そう言われても、直ぐに、良いですよ、と言う気持ちにはなれない。


もう、お互いに、言いたい事は言い尽くした。


初めからずっと皆の輪の中に居る夫は、初めのころは荒れて、大きな声を挙げたりしていたが、いつの間にか、大人しくじっと座って居る。


聞いているのだろうか?


夫は、この状況をどう感じているのだろうか?


答えてほしい。


何でも良いから言ってほしい。


お父さん、「ここが、いちばん、いい」って言う、タイミングは、今だよ!


と、思ったけど、夫は口を開いてくれない。






Sさんが、私たち家族を見回してから言った。


じゃあ、3人で決めて下さい。


今までは、ずっと「奥様が決めて下さい。」と言われていたのに、今度は三人で決めなくてはならないらしい。


三人で、と言っても、結局は私が決める事になる。


息子たちは、誰も、私の反対を無視して、無理やり決める事はしない。


優しいから?


頑固な母親の性格を知っているから?


言っても無駄なことは言わない?


下手な意見を言うと、逆上する可能性がある?





誰も、もう何も言わない。


時間だけが過ぎて行く。


空気が重い。


私は、メグちゃんに助けを求めた。


抱き上げて聞いてみた。


ねえ、メグちゃん、どうしたら良いと思う?困ったねぇ・・・


メグちゃんも、何も答えてくれない。


つぶらな瞳がじっと私を見つめているだけだ。


Sさんが口を開いた。


じゃあ、こうしましょう。二択です。今日、入院するか、一週間後に息子さんが出張から戻ってきてから入院する。


どっちにしても、入院ですか?


そうです。




(もう、観念するしかないか・・・・)


だんだん、どうでも良くなってきた。



と、同時に、


周りにそう言われ続けているうちに、自分はもしかしたら本当に共依存なのかもしれない、


ちゃんと状況判断できていると思っているけど、そうではないのかもしれない、


もう、病気なのかもしれない、


と言う、思いにも取りつかれてきた。


夫については、私は誰よりも最大の理解者だと思ってきた。


息子たちよりも、ましてここ数年で夫に関わった人たちよりも、ずっとずっと私が一番良く分かっている。


たとえ、相手がこの分野の専門家としてもだ。


夫の苦しみ、


夫の絶望、


そして、ほんのちょっとの喜び、


私以上に、分かっている人が居るわけがない。


そう、信じて疑う事など、今まで一度もなかったのに、


今、この空気の中で、私は、もしかしたら間違っているのではないだろうかと言う思いに取りつかれた。


分かっているつもりだったけど、実は、何も分かっていないのか?


近くに居過ぎるが故に、見えていないのか?


夫の為だと信じて疑う事無く突き進んでいた過去が・・・


間違っていた?





何だか、分からなくなって来た。






きっとSさんは、私が入院を了承するまで帰らないだろう。


疲れた。


何もかもがもうどうでも良い気分だ。


じゃあ、もう連れて行ってください。





意を決して言ったのに、Sさんはこう言った。


私たちが連れてゆく訳には行きません。奥様が、入院させると言って下さらないと出来ないのですよ。


(どうでも良いでしょ、単なる言葉のあやなのに)


分かりました。では、入院させますのでよろしくお願いします。


これで、K2病院への三度目の入院が決まった。


Sさんは直ぐに病院に電話した。


今、○○さんの家に来ているのですが、奥さまが入院を希望されましたので・・・・・・


(ちがうでしょ・・)と思ったけど、もうどうでも良い事だ。







私は、夫にプリンを食べさせた。


最後のお八つだよ。


直ぐに食べ終わったので、ヨーグルトも食べさせた。


怒る夫の両手を師長さんと次男が押さえている。


夫は、きっと雰囲気を察しているのだろう。







また・・・・何かが起こる、


それを敏感に感じているのだろう。







入院の準備は簡単だ。


上履き2足と、電気かみそり。


後は、お金を少々と印鑑。


それだけで良い。


慣れたもんだ。


3回目だから。


そんな訳で、こちらは準備OKなのに、中々介護タクシーが見つからない。


あまり遅くなると、入院の手続きが難しいらしい。


Sさんたちが乗ってきた車に座らせようか、などと話しているが、


無理、無理。


今の夫を、普通の乗用車に乗せるなんて絶対に無理。



結局、夫は、我が家の配達用の車の後部に布団を敷いて、横たわって行くことになった。


息子二人と、Sさんたちで、車椅子に乗せたままの夫を家から運び出した。


大きな声が聞えてくる。


「いっしょにいく!」と飛び出していったメグちゃんを連れ戻して、「ゴメンネ」とぎゅっと抱きしめてから、車に戻ると、夫は、既に布団に寝かされていた。


師長さんが足元に座っている。


私も、靴を脱いで乗り込み、夫の頭の方に座った。


次男の運転で出発だ。


何と言う運命だろうか。


混乱のまま車は動き出した。


30分の道のり、夫は、何を感じただろうか。


動く限り身体を動かし、そして、言った。




なんで、こんな・・・・



本当に、何で、こんな運命なのだろうか。


せっかく家に戻って、漸く楽になれそうだったのに、今、また、こうして病院への道を走っている。


本当に、なんで・・・こんな・・・・・


なんで・・・こんな・・・・



膝の上に辛うじて乗っている夫の頭を撫でながら、私はもう、何を考えることも出来なかった。


可能ならば、このまま二人で消えてしまいたい。





2度目の退院の時に、今度こそは、もう2度と来る事がないだろうと思っていたK2病院に・・・また、着いた。


師長さんが、車を降りて、スタッフを呼びに走る。


道中も、待っている間も、私はもう、疲れきっていた。


口を開く元気も出ない


暫くすると、見慣れた顔の看護師さんが3人、車椅子を持ってやって来た。


(はぁ~・・・・また、お世話になります。)


夫は、男性看護師さんに抱きかかえられて車椅子に座り、そのまま病棟へ連れて行かれた。


私と息子は、診察室で、M先生に出会い、いつもと同じ書類にサインをした。


医療保護入院である事と、拘束への承諾書に違いないが、内容を確認する気力などない。


何もかもがめんどくさくて仕方がない。


早く帰りたい。


その後病棟へ上がって、担当の看護師さんから、いつも通りの説明を受けた。


担当看護師さんも、3回とも同じ男性看護師さんだ。


「また、僕が担当させていただきます。」と。


良く分かってもらえるので安心できる。


ここでも、いつもと同じ説明を受ける。


3冊目の入院案内は、いらない、と断ったけど、やっぱり渡された。


にこやかなお兄さんの説明を聞きながらも、早く帰りたいと思っていた。


疲れた。








次の手順は、一階に降りてソーシャールワーカーさんから入院の事務手続きを聞かされて、その後受付に行って、保証金とお小遣いを支払うのだ。


そうしたら、帰れる。





看護師さんとの話しが終わる頃に、Sさんがやって来て、私たちは1階に下りることになった。


病室に居るはずの夫が気になったが、最後にもう一度顔を見に行く元気は、出なかった。


病棟のドアまで送ってくれた師長さんが、何か言いながらとても丁寧にお見送りして下さったけど、何を言われていたのか覚えが無い。


ただ、無理やり入院させてごめんなさいね、的な雰囲気だった。


(いいんですよ、最終的に、私が、「入院を希望した」のですから。)


エレベーターの中で、Sさんも言った。


奥様に嫌われそうだなぁ・・・



上手い返答を見つけられないので、、


嫌いになりそう・・・


冗談で誤魔化した。



その後、事務手続きを終えて、やっと解放された。


帰り道、どっと疲れた。


過去のどの入院時よりも、疲れが酷かった。


無言で帰り着いた。


千切れんばかりに尻尾を振って飛び出してきたメグちゃんを抱きしめると、ちょっとだけ元気が出た。





あの日から何日が過ぎただろう。


息子が写して来てくれる動画で、夫の様子を見る事が出来る。


家に居た時と何も変わらない。


相変わらず、怒っている事が多いらしい。


まだ、個室に入っている。


ホールに出る事が出来ない。


何だこれは?


一年前と同じじゃないか。


結局、私がして来た事は、夫を過去の苦しみに引き戻しただけじゃないか。


やっぱり、私は間違っていたんだ。


もう・・・・やめよう。


夫は、もう、いない。












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