Aホームに転居して、2ヶ月が過ぎた。
夫は、とても落ち着いて来た。
環境が良かったとも言えるが、それだけ病気が進んだのだろう。
あのままずっと病院に居たとしても、今頃は、同じ様に落ち着いていたのかもしれない。
が、もしかしたら、ずっと拘束が続いていたのかもしれない。
両方を同じ時期に同じ人で試す事が出来ない以上、考えても仕方がない。
とにかく、夫は今、とても良い環境にあって、穏かさを取戻した。
眉間の皺もあるけれど、以前の様に大きな声を出したり、激しく怒って手を振り上げたりすることは、無くなった。
これ以上、望むことは・・・ない。
ただただ、穏かでいてくれたら、それだけで良い、と願い続けた日々が、少し遠くなった。
でも、嘗て、何度も何度も地獄へ突き落とされ、今度こそと思っても、また落とされ、そればかり繰り返してきた私は、実は、今でもまだ猜疑心が解けない。
きっと、何かあるだろう。
最後の最後まで、地獄への落とし穴が、見えないように口をあけているに違いない。
とは言え、目の前の夫の穏かな顔や、たまに出る笑顔を見ていると、心の中のガードが少しずつ緩くなってきたのも事実だ。
今日はどんな顔をしているか、と、ドキドキしながら面会に行く事もなくなった。
しかめっ面でも、たまには怒りん坊さんでも、そんなに気にならなくなった。
そう言う時もあるだろう、と思える様になった。
そんな感じで、この2ヶ月、ほぼ毎日夫に会いに行っていた。
近くて行きやすい上に、メグちゃんまで一緒に居られるのだから、快適この上ない。
であるが、最近とても疲れを感じるようになった。
我が家は、自営業なので、融通がきく変わりに、家から居なくならない限り、休みがない。
いつもいつも時間に追われている。
もっとも、ここ数年の嵐の中を、私が何とか倒れずに歩いてこられたのは、やらなくてはならない仕事が目の前にあったからであると思うので、今後も、動ける限りは仕事を続けて行きたいと思う。
とは言え、今年は、還暦だ。
「おばあちゃん」と呼ばれてもおかしくない年ではないか。

そこで、少し考えた。
もう少し、のんびりしよう、と。
近いから、と言って、せっせと毎日会いに行かなくても良い、ことにしよう、と。
そして、行かない日。
なんだか、とてものんびりとゆっくりした気分で過す事ができる自分に、ちょっと驚いた。
いつもいつも、夫の事が気になり、離れていてもその呪縛から逃れられない、嘗ての私ではなかった。
それもこれも、全て、夫が穏かで居てくれるからだ。
そして、私でなくても、職員さんたちが、気をつけて看ていてくれると言う安心感があるからだ。
そんな信頼できるホームに出会えた事に、感謝一杯だ。
「
行かなくちゃ」

と、強迫観念に駆られていた時もあった。
今は、「行かなくても」と思える。
少し、のんびりしよう。
何もしない時間が、この上なく心地よい。
momoさんの時間、自分だけの時間をゆっくり過ごして下さい。
今までが大変過ぎたのです。
今のホームに出会えて本当に良かったですね。
今までの苦労が報われて本当に良かった。
ご自身の体と心、大切にして下さいね。